不機嫌な妹と最低の兄

「アレスさん、マリアンヌちゃんと浮気しましたね?」

「えっ!?」


 俺の部屋に来たアミが涙目で訴えるように言った。


「私、アレスさんの部屋でずっと待ってたんです。でも帰ってこなくて、おかしいなと思って酒場まで迎えに言ったら、アレスさんとマリアンヌちゃんが……。」

「わ、悪かった、アミ。何の言い逃れもできない。」

「アレスさんは、私とマリアンヌちゃん、どっちが好きなんですか?」

「それは……その……。」

「私とマリアンヌちゃん、どっちが気持ちいいんですか!?」

「そ、それは……もちろんアミだよ……。」

「……本当ですか?」

「ああ、本当だって。」


 アミが「んっ」と言って俺に向けて両手を広げた。俺に自分を抱けというのだろう。

 俺はそっとアミを抱きしめた。


「ごめんな。もう二度とマリアンヌとはしないから。」

「……いいえ。いいんです、アレスさんが誰としても。私のことも愛してくれるなら、それで。」

「アミ……?」

「捨てられるのはイヤ。」

「……捨てるわけないだろ。俺はアミのことを愛してる。」


 俺はアミにキスをすると、そのままベッドに押し倒した。


     ◇


 次の日、マリアンヌが俺の部屋に来て言った。


「アミから聞いたよ、先輩。バレちゃったんだってね。」

「ああ……。」

「それで私、アミ公認のセフレってことで落ち着いたから。」

「はぁ?」

「週二回、先輩の部屋に来るんでよろしく。」


 ズカズカと俺の部屋に入り込むマリアンヌ。

 マリアンヌは俺のベッドに腰掛け足を組み、ちょいちょいと指で俺を呼んだ。


「なんでこうなるんだ?」

「ふひひ。私のこともいっぱい可愛がってよね、先輩。」


     ◇


「お兄ちゃん! 私はお兄ちゃんを追放する!!」

「なっ、なんで!?」


 場所は冒険者ギルドではない。人もまばらな昼過ぎの酒場だ。聞いてる者はほとんどいないだろう。それは幸いだった。

 しかし、また追放を宣言されるとは。しかも妹に。

 

「なんで、じゃないでしょ!? 私の方こそ、なんで? だよ!」


 モカの後ろにはバツの悪そうにしているマリアンヌとアミが立っていた。


「アミとはしょうがないと思ってたよ! 付き合ったんだし、それは私も止めなかったし。でも、マリアンヌともやったなんて!」

「やったって、お前。そんな言葉づかいは……。」

「お兄ちゃんは今、私に説教できる立場じゃないでしょ!?」

「あ、ああ。すまん……。」


 怒り狂っているモカの迫力に俺は圧倒される。


「毎晩毎晩、アミともマリアンヌとも寝てたの!? 二人とも私の友達なんだよ!?」

「悪かった。落ち着いてくれ、モカ。」


 俺はなんとかモカをなだめようと思った。だが、俺が何を言っても逆効果のようだった。モカの興奮は収まらない。

 マリアンヌが恐る恐るといった感じでモカに話しかける。


「あー、モカ。ごめん……。モカの大事な兄さんだとはわかってたんだけど、つい……好きになっちゃって。」

「マリアンヌは黙ってて!」


 いつの間にか、アミもマリアンヌも俺の側に立っていた。

 アミがモカに言う。

 

「モカちゃん。でも、私はアレスさんを愛してるの。」

「アミ! じゃあなんでマリアンヌのことを許したの!?」

「だって、彼女とセフレは違うジャンルだから。」

「……何それ。」


 感情を制御できなくなったモカはその場に泣き崩れた。

 ぽろぽろと落ちたモカの涙が地面に染みを作る。

 

「うぅ……。私が……。私が最初にお兄ちゃんを好きになったんだもん……。お父さんとお母さんが再婚して初めて会った時から私だけのお兄ちゃんだったんだもん。お兄ちゃんと一緒にいたくて冒険者になったのに。モンスターとの戦いが辛くてもお兄ちゃんのためと思って頑張ってきたのに……。それなのに、アミに取られちゃって……! マリアンヌも知らないうちに抱かれてて……! そんなのってないよ!」

「モカ……。」


 そうだったのか。モカの気持ちに気付いてやれなかった俺は、心が締め付けられるように痛んだ。俺がモカのことを大事に思ってるのは本当のことだ。愛していると言ってもいい。


「モカ。俺もモカのことを愛している。」

「それは……兄妹として? ……家族として? それとも……? もう私の気持ちは抑えられないの、お兄ちゃん。」


 モカがすがるような目で俺を見た。今、俺の目の前にいるのは、冒険者だとか義妹だとかそんな属性は関係ない。ただ俺を慕ってくれているだけの一人の少女だった。

 モカの背中にアミが手をおいて声をかけた。


「モカちゃん、大丈夫。義理の兄妹は結婚できるよ。」

「……え?」


 その一言で俺の気持ちは決まった。



 モカのために特別に借りた最高級の部屋。少女三人が並んで寝てもまだ余っている特大のベッドの上で、下着姿のアミとマリアンヌが手招きをする。

 ベッドの真ん中には、やはり下着姿のモカ。

 俺はゆっくりとモカに覆い被さるようにベッドの上に移動する。

 モカの恥じらう姿がいじらしい。


「お兄ちゃん……。私、初めてだから、……優しくしてね?」

「ああ。キレイだよ、モカ。」


 周りで俺とモカのやり取りを見ていたアミとマリアンヌが手を伸ばしてきて、そっとモカの下着を脱がせた。

 実家ではモカと一緒に風呂に入っていたのでモカの裸なんて見慣れていると思っていた。しかし、数年ぶりに確かめるその体はしっかり大人に成長していた。

 俺はモカの手を優しく取ってその体を開かせると、指を這わせた。

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