第4話 バレました

 もし、児相に通報したら、翔太は施設に入れられるかもしれない。そしたら、翔太は転校してしまって、俺は担任から外れるだろう。もう、彼の人生に携われない。そう思うと、俺は寂しくてたまらなかった。彼を手放したくなくなった。


 翔太は俺の方に手を伸ばして来た。俺はしっかりと彼の上半身を抱きしめた。

「俺も好き」

 正直に気持ちを打ち明けた。教師としては失格だと思う。しかし、彼に対する思いを止めることはできなかった。


 ここからは、18禁の展開になる。


 ***


 俺の小説には、固定のファンが付いて、コメントをもらったり、充実した毎日を送っていた。


 俺は昼休みもずっとPCで小説を書いていた。

「前田さん、昼も仕事?」

 おばさんが尋ねる。

「仕事じゃないよ。ちょっと」

「出会い系?」

「違うよ!」

 俺は焦って否定した。

「怪しい!彼女できたの?」

「違う、まさか。今さらPCでメールなんかしないですよ」


 俺の彼女いない歴は8年にもなる。最後の彼女と別れて、あっという間だった。その間もずっと、婚活をしていたが、彼女というような人はいなかった。あの当時でもかなり妥協して付き合ったのだから、さらに年を取ってしまった今では、無理だろうと思う。


 俺はまた昼を食べながら会社のPCで小説を書いていた。どうせ中小企業だから、どんなサイトを見てるかITの人がチェックしているわけじゃない。それでも、俺は慎重になっていて、履歴が残らないように、グーグルのシークレットモードで入力をしていた。

 女性二人は喋りながらお弁当を食べていた。俺はちょっと人目が気になったけど、早く続きが書きたくて入力を続けた。家に帰ってから小説を書いていると、家事をやる時間がないからだ。その時書いていたのは、平たく言うとベッドシーンだ。結構、露骨な表現をしてみた。そうすると、PVが伸びるからだ。最近は、エッチなシーンをひっきりなしに入れているが、そうしないと飽きられてしまう。極端な人になると、エッチな回しか読んでもらえないのだ。


 俺は一話分を上げて、ほっとしてトイレに行った。トイレで用を足しながら、PVが伸びるといいなと思っていた。いくらPVが伸びたところで、商品券と交換するつもりはなかったのだが。理由は銀行口座を登録したり、個人情報を入力しなくてはいけないからだ。誰にも見られることはなくても、俺は変な話ばっかり書いているから、どうしても名前を出したくなかった。別に500円の商品券をもらってもしょうがない。一回弁当を買わないで我慢すればいい金額だからだ。


 昼を食べた後、歯を磨いたりして10分くらいトイレにいたと思う。その間も、スマホを見てしまう。自分の小説ページを開く。早速、見てくれた人がいる。昼の時間は見てくれる人が増える。多分、社会人の人は休憩時間なのだろう。歯を磨きながら、俺もフォロワーさんの小説を読む。


 俺はデスクに戻った。すると、机の上にポツンとお菓子が置いてあった。信玄餅だ。

「あ、これ・・・」

「週末、山梨に行ってきたからおすそ分け」

 おばさんが言った。

「へえ、観光?」

「そうそう。ブドウ狩り行ってきたの」

 ふとパソコンを見ると、俺の小説の作業ページが表示されていた。まずい・・・と瞬時に察知した。俺はスクリーンセーバーを使用していない。なぜかと言うと、俺のHPのPC(Windows10)でスクリーンセーバーを使うと、パソコンの電源が落ちないと言う不具合があるからだ。


 俺は青ざめた・・・・俺の小説が見られてしまったかもしれない。しかもそれは、「俺と翔太の110日~ショタコンでごめんなさい」という変なタイトルだった。俺は積んだと思った・・・。きっと、おばさんはサイトとタイトルをメモって、俺が何を書いていたか見てるだろう。


「前から小説みたいなの書いてると思ってたけど、前田さんって男の子が好きだったの?」

「え?」あ~あ、バレてしまった・・・んだ。俺は真っ赤になった。人前で裸になるより恥ずかしい。

「すごい意外。私も女の人が好きだと思ってた・・・」

 パートの人が変態を見るような目で言った。

 今すぐ早退したかった。


 俺はその後、すぐにアカウントを削除した。登録してくれてたフォロワーさんとの別れは惜しかったけど、仕方ない。何か月も費やしたのに・・・バックアップを取っていないから、俺の小説の登場人物たちも永遠に消えてしまった。


 ***


 俺がショタコン小説を書いていたことは、社内中に知れ渡ってしまった。俺はいじられやすいタイプだから、会社に行ったら、かわいい男の子が出てるチラシが置いてあったりした。悔しかったが、俺はそれをわざと目の前に貼って仕事をした。


「男の子が好きでもいいと思いますよ。そういう人もいるかもって感じですよね」

 パートの人が言う。

「ゲイの中学生とか高校生もいますよ」

「そうそう。よく、ニュースになってるし。お金を渡して捕まったとかね」

「お金渡さなかったらいいんですよ。警察に、ちゃんと付き合ってるって言い張ればいいんですよ」

 パートの人が言った。意外といい人かもしれない。


 俺は最近、新宿二丁目に通っている。まだ、お店に入れない未成年の子たちがうろうろしているからだ。そういう子たちに食事を奢ってあげたり悩みを聞いてあげている。そのうち、誰かが彼氏になってくれるかもしれないと期待しているが、今の所、みんなに断られている。

 

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身バレ 連喜 @toushikibu

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