第6話 会敵
「監視ドローンが敵艦を補足、距離約40、現在の進行方向正面です。」MAIが音声報告をした。
続けてミミがコントロールパネルで詳細を確認して報告を続けた。
「艦長! 友軍艦の識別コードも補足出来たデスッ。極東艦隊、健在デスッ。あぁっつ! こちらも索敵されたようデス、敵機がこちらへ向かってくるデスッ。」
「いよいよですわね。 西浦さん、高橋主任、お願いしますわね。」
西浦が説明を始める。
「航空機に対しては、全主砲の電磁砲を最低出力で発射することで、チャージ時間が短くなり、連続発射を可能にして対空防御に使うことで簡易的な電磁バリアが完成します。もちろん、万一打ち漏らした場合でも電磁高射砲が仕留めます。そして敵艦が主砲の射程距離に入った所で、電磁砲を最大出力にして打ち込めば、相手は避ける以外の防御策はありません。」
高橋が続ける。
「魚雷、海中攻撃に対しては電磁装甲でお守りします。」
コントロールパネルが切り替わり、ミミが読み上げる。
「敵編隊補足12機デス。距離30、主砲最低出力での射程距離まであと7分デス!」
「いらっしゃいましたわね。 それではショータイムと参りましょう。副長、西浦リーダー、砲撃用意お願いします。あと7分、待ち遠しいですわね・・。」
「あ!艦長、もう一つよろしいでしょうか!」西浦が何か閃いたようだ。
「西浦リーダー、何でございましょう?」
「武蔵には全方位型超電導推進スラスターの実験機が2機搭載されています。これを前進方向で最大出力で作動させると理論上武蔵の速度は2割程度早くなるはずです。武蔵は運用上、最速30ノットですが、これは停止距離の問題による制限なのです。停止距離を無視した、設計上の超電導スクリューの仕様では最速は50ノットです。そしてスラスターでブーストすれば、約60ノットになるはずです。ただし、速度が速すぎて停船できませんが、この大洋のど真ん中なら問題ないはずです。」
「まぁ、爆走武蔵ですわね。素晴らしいわ。やりましょう、何でも試してみましょう。 では、武蔵、前進一杯、制限解除、機関最大性能で航行、スラスター前進方向で全開稼働させて下さい。」
「了解デスッ! 前進一杯、スラスター全開、武蔵、現在速度30、35、40、45、50、55、60ノット到達デスッ。」
「60ノット到達了解。爽快な航行ですわね。」艦長はケラケラ笑っている。
「いやいや、、戦艦としてありえない速度なんですケド・・」ミミが呟く。
艦橋から肉眼で敵機が見えた。ミミが射撃タイミングを読み上げる。
「主砲、最低出力での一斉連続射撃開始まで、あと20秒デス!・・15・・10・・5、4、3、2、1、射撃開始デスッ!!」
前甲板では第一、第二主砲、第一副砲が電磁砲の連続発射を開始、光に包まれたような眩しさで前が見えない。
「眩しい光しか見えないデス・・でも、レーダー上の敵機は消滅していっているデスッ。残り3機、2、1機。敵機全て消滅デスッ!」
「主砲打ち方やめて下さい。 各部、情報報告お願いします。」
「各砲塔、全ブロック被害なしデスッ」
「すばらしいですわ。 速度このまま、進路敵艦隊中央、主砲射程距離に入り次第、砲撃開始、そのまま砲撃を続けつつ、敵艦隊中央を突破します。武蔵に手を出したことを後悔させて差し上げますわ。全身で一生をかけて償いなさいませ!!」
「艦長、やっぱりキレてるデス・・・」ミミが小さく呟いたあと、射撃タイミングを読み上げ始めた。
「グロワース艦隊6艦、最初の艦の主砲到達距離まであとあと30秒デス!・・15・・10・・5、4、3、2、1、射撃開始デスッ!!」
第一、第二主砲から電磁砲が発射され、グロワース艦の爆発が見えた。
続けて第二射、グロワース艦の火の手が更に大きくなる。
「グロワース艦、消失したデス。 次の目標艦の射程距離まであと10秒・・5、4、3、2、1、射撃開始デスッ!!」
同様に電磁砲2射目で敵艦は轟沈、続けて3艦目も轟沈。
「これから先は敵の主砲射程距離に入ります。以後、主砲は敵艦攻撃を、副砲は敵攻撃の防御をお願い致します。グロワース艦隊中央突破の際には直進ではなく、各艦の間をジグザグに縫って性能の差を見せつけて相手の戦意も消失させて差し上げましょう! うちの航海士の腕を存分にご覧あそばせ!」艦長の指示が飛ぶ。
凪沙も艦長のキレっぷりに乗せられて航海士(梅川拓海。無人島周辺で夜中に開催される違法スピードボート草レースの世界で神と呼ばれる男)に指示を出した。
「拓海クン、遠慮は無用、全開でぶっ飛ばしちゃって!」
「航海長、了解。各員、しっかり掴まっててくださいね。行きますよ!」
航海士は全速力の武蔵をグロワース艦に向けた。
「え。。え。。ぶつかるデスよ・・・」ミミが引きつりながら呟いたその時、
「取舵いっぱい、スラスター左旋回全開!」ノリノリの航海士とともに武蔵が軋み音を出しながら急旋回した。
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