第5話 全開!
武蔵は核融合炉が最大稼働し始めたため、艦内に地響きと重低音で振動している。
「艦長!回頭完了デス!」
「了解です。砲術科、試験チーム、全主砲、目標敵機方向、細かい照準は不要です。敵機周辺の空間をまとめて焼き尽くして差し上げて! 性能試験だと思って思いっきり打ち放って頂けますか? 各個自由射撃!」
「凄い命令デス・・・」ミミが震えた。
武蔵前甲板が大きく光って第一主砲から電磁砲が発射され、続けて第二主砲から、同時に第一副砲から、そして、戻ってまた第一主砲からと、各砲、5発づつ電磁砲が発射された。命令通りとはいえ、たった6機の敵機に照準もあわせず電磁砲を雨のように浴びせかけて落としてしまうとは、豪快を通り越して無茶苦茶だ。
「敵機反応消失デス」ミミが報告した。
「艦橋に遮光装置が無いと眩しくて前が見えませんわね。」艦長はケラケラ笑っている。
「カイト、主砲はどうデスか?」ミミが砲雷士(横山海斗)に尋ねた。
「副長(ミミは砲雷長兼副長)、5連射で砲身の温度が限界ですね、次は海水を使った水冷装置を併用する実験をするそうです。」
「実戦だけど実験、武蔵、最高ですわね、どんどん参りましょう。」艦長は更にケラケラ笑っている。
「艦長、、コワいデス・・・」ミミが小声で呟く。
試験チームの西浦リーダーと重工の高橋技術主任が艦橋へ上がって来た。
「ご足労お掛けしてしまって失礼致しました。お二方にお願いが御座いまして・・」
艦長が話始めると二人は黙って頷いた。
「このまま敵機が来た方向へ進みたいと考えております。極東艦隊の救援に向かいたいのです。 ただ、本艦は正式な軍艦ではなく試験艦です。 規模も不明な敵艦隊に立ち向かえるものなのか、お二方のご意見をお伺いさせて頂きたく存じます。」
「艦長、今の電磁砲は如何でしたか? 武蔵の核融合炉は学園都市の発電施設より大出力、いわば動く発電所、無尽蔵なエネルギー原です。そして武蔵の兵装は全て電気エネルギー式、性能でも、物量でも、武蔵に敵はありません。」西浦が答えた。
「艦長、いや、お嬢様。重工の技術チームはお嬢様をお守りすることが任務です。それ以上でもそれ以下でもありません。そして、それがどのような状況でも全く変わりません。お任せください。」高橋技術主任がにこやかに答えた。
「わかりました。お二方ともありがとうございます。 わたくし、覚悟が決まりましたわ。 ただ、残念なことに、わたくしは試験装置も防御装置も詳細を存じませんし、有意義な使い方が出来るとは思えませんので、是非、お二方にも艦橋でご一緒していただきたく存じます。」
二人は無言で頷き、それを見た艦長は再度前方を向きなおした。
「武蔵、敵機の飛来方向へ向けて最大戦速で参ります。 アラートレベル1、戦闘配置のまま待機してください。 副長は、極東艦隊へ向けて継続的にコンタクトを続けて頂けますか。」
「了解デスッ!」
ミミは極東艦隊への無線を送り続けている。
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