第4話 覚醒
後方から爆発音と発砲音が響き、即座に艦長が艦橋のスクリーンへ第三護衛艦艦橋カメラの映像を映すよう指示した。
各護衛艦はAI操艦による無人艦であるが、元々通常護衛艦をAI化したものなので艦内は通常艦と同様の造りで、人間が見る目線に合わせてカメラが設置されている。
今映っているのは、第三護衛艦艦橋の艦長席からの映像だ。
スクリーンには第三護衛艦へ向かって機銃を撃ち続けているグロワースの攻撃機が3機と第三護衛艦が放っている対空砲の射線が弧を描いて上下左右に移動している様子が写しだされている。
「実戦・・なんだよな・・。」凪沙が呟いた。
グロワース機が正面上から降下してきて爆弾を投下した。
後方からの大きな爆発音と共に、映像が消えた。
ミミが叫んだ。「艦橋・・艦橋に被弾・・。第三護衛艦航行不能デス!」
更に爆発音が続いた。護衛艦コントロールモニターの第三護衛艦の表示がLOSTに変わり、グレーアウトした。「第三護衛艦・・轟沈デス・・」ミミの声が震えている。
艦長が艦長席から立ちあがった。
「わたくしの艦隊が轟沈!?」呟いた後、そのまま目を閉じて微動だにしない。
続けて護衛艦コントロールモニターが第二護衛艦の被弾を報告して来た。
「艦長! 第二護衛艦、機関部損傷、航行不能デス・・」ミミが読み上げる。
更にコントロールモニターは報告を続ける。
「艦長! 第一護衛艦、前部甲板被弾、小破デス!」
「いくら航海用AIで、オマケ程度の防衛プログラムだとしても、10分とかからずに護衛艦隊がやられちまうのかよっ!」凪沙が壁を殴りつけた。
「か、艦長! 監視ドローンが敵機を補足! 更に6機が向かってきているデスッ!」再びミミが叫んだ。
艦長が目を見開き、おもむろに壁面の飾り棚から布刀袋に入った儀礼用長剣を手に取り、艦橋の最前部に立つとメンバーに向かって振り向いた。
「周年記念艦隊が傷つけられました。物理的にも精神的にもです。たとえ無人艦だとしても、護衛艦隊はわたくしの艦隊です。わたくしはこの暴挙を決して許すことはできません。 そして次の敵機の攻撃目標は武蔵だと推測されます。 よって、ここに武蔵の防衛行動を発令致します。」
「艦長!了解デスッ! やりましょうデス!」
「了解!!目にもの見せてやるぜ!」
ミミと凪沙が即答し、七海も「逃げ切れるものじゃないですから、当然の判断だと思います。」と加えた。
艦長は恭しい大きなゼスチャーとともに儀礼用長剣を布刀袋から取り出した。
全員、訳が分からず、呆然と艦長を見つめる。
「え!?、、その紋章は・・」七海が呟いた。
「実は、この刀は連邦政府の官給品ではなく、わたくしの私物ですの。富士宮家に代々受け継がれてきた、戦前古代の日本国の天皇家から賜った菊花紋章の入った守り刀なのです。必ずやわたくし達をお守り下さいます。」
艦長が掲げた長剣の鞘には黄金の菊花紋章が輝いた。
艦長は再び目を閉じると、長剣を左腰に帯刀して、ゆっくりと目を開けた。
艦長の瞳は炎のような灼眼に変わっていた。
まるで古代の軍人、武人のように左に刀を帯刀した灼眼の艦長。
「武蔵反転180度、全武装並びに全実験用装置使用許可、核融合炉最大出力、武蔵回頭完了とともに敵機方向へ電磁砲を最大出力で発射準備願います。武蔵の本当の力をお見せして差し上げますわ! あと、試験チームの西浦チーフ、重工の高橋技術主任にも艦橋へお越しいただいて下さい。」
艦長、相変わらず丁寧な口調ではあるが、完璧にキレているようだ・・。
「りょ、了解デスッ」
ミミは初めて見る艦長のキレた姿に鳥肌が立った・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます