黒崎トウカと噴水広場 ②
「この三角が俺……なのか。 名前書いてあるし。 で、ここが中央の噴水広場。 て事は……んん? なんか俺のアイコンとクエストのアイコンが重なってるんだけど、なにこれ。 もしかして近くに居るのか?」
俺の三角アイコンが丸型のアイコンに殆んど被さられている。
とどのつまり、ほぼほぼ至近距離という事なのだろう。
「なら探してみるかぁ。 幸いにも噴水広場だけだし、探しやすいだろ」
一先ず俺はアイコンに従い、噴水の反対側に回ってみた。
するとそこには……
「あ……もしかしてあいつか? いや、絶対あいつだわ。 だって異様な存在感だもの」
アイコンの示す位置までやって来ると、目的の人物はすぐ見つかった。
何故そんな簡単に見つけられたのか。
これだけの人混みで。
理由はとても簡単。
「なにあの娘、あそこにもう半日は座ってるわよ」
「通報した方が良いかしら、変な服着ているし」
プリーツスカートにワイシャツ、ネクタイ。
更に紺の上着という、ザ・女子高生と言わんばかりの格好をした黒髪女子が座っているからだ。
俺も上下黒のスウェットだから人の事どうこう言えないが、あれは目立つ。
お陰で周囲から痛い視線を独り占めだ。
あれはつらい。
早めに話しかけた方が良いかもしれない。
あんまり関わりたくないが、俺にとって必要な女なのだから仕方がな……
「ふっ、まったく私にも困ったものね。 どこに行っても注目を集めてしまう。 罪な女ね」
俄然関わり合いになりたくなくなってきた。
なかなか変な奴っぽい。
ここで声を掛けたら俺まで変な目で見られそうだし、あの分なら多少放っておいても大丈夫だろう。
黒崎トウカには悪いが、このまま少し我慢をして貰って人が捌けるのを待つとするか。
と、踵を返した矢先、背後から物悲しい言葉が聞こえてきた。
「……あれ、おかしいな。 悲しくない筈なのに涙が。 ふふ、ゴミでも目に入ったのかもしれないなぁ」
俺はその声にため息を吐きながら振り向いてみる。
そこでは、黒崎トウカは空を仰ぎ見て涙を一筋流していた。
「はぁ……しゃあないな、まったく」
どうにも昔から女の子の涙にはめっぽう弱い。
気付いた時には俺は駆け出していた。
どこからどう見ても英雄候補なんかじゃなく、ただの女の子にしか見えない黒崎トウカの元へと。
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