黒崎トウカと噴水広場 ①
「ん……まぶし……」
強烈な日差しを俺は咄嗟に腕で防ぎつつ目を開ける。
「……おぉぉ」
最初こそ日差しに目が慣れていないせいで視界がぼやけていたが、慣れていくと中世のようなレンガ造りの町並みが視界に広がっていった。
ギャル神とさっきまで喋っていた『転生の間』という場所とは大違いだ。
明るいのも勿論だが、なによりも活気のある人々の声。
馬車の音に、馬の嘶き。
そしてすみ渡る青空が、転生の間の薄暗さを忘れさせてくれる。
ここが異世界なのだと教えてくれた。
「おっとすまん、少年。 剣が当たっちまったな」
「あ、すいません」
ぶつかった騎士らしき人物に会釈すると、銀ピカ鎧のオジさんはニッと笑みを浮かべ去っていった。
「すっげ、本物の騎士だ。 剣、かっこい……」
仕方なく異世界に来た身だが、それはそれこれはこれ。
先程までの鬱屈とした心持ちは、夢にまで見たファンタジー世界に侵食され、観光客ばりにウキウキしている。
自分の事ながら現金な物である。
が、ずっと田舎者丸出しで街を見渡している訳にはいかない。
「いかんいかん、まずは黒崎って人を見つけないと」
とはいえ、そう簡単な話じゃない。
この街はそれなりの規模らしく、かなりの人通りだ。
この中から一人を探すのは容易ではない。
そこで、魔法陣による転生直前にギャル神から授かった、このチートの出番である。
「えっと、どうやるんだったっけ。 近辺の地図が載ってるパンフを出すんだから……『エリアガイドブック』を召喚する!」
なかなかに恥ずかしい所業だったが、恥を忍んでやってみた甲斐があった。
チートスキル『ガイドオブオーダー』を用いスペルを発すると、目の前で突如小さな白煙が出現。
それが晴れると中から本が落ちてきた。
「おっと、あぶね。 ほんとに出たわ」
エリアガイドブックは普通に本だった。
案外分厚い。
街だけじゃなく、他にも情報が載っていそうである。
となれば善は急げ。
俺はまず最初のページを捲ってみた。
「なんだこれ。 現状利用可能なメインクエストとサブクエスト、タスククエストの……一覧?」
一ページ目は目次的な感じなのだろうか。
そんな内容が記されている。
「メインクエスト……取り敢えずこれをこなせば良いのか。 ……うわ、なんだ?」
なんとなくメインクエストである『黒崎トウカを探せ』をタッチしてみたら、ページが勝手に捲られていったのだ。
どうやら検索機能みたいなものらしい。
止まったページにはこの街の地図と、『Main』というアイコンがポコンッと出ている。
街の名前は『ヴェルネストタウン』と言うのか。
全容としては円形。
周辺は壁で覆われているようだ。
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