異世界転生なんて冗談じゃないと言いたい所存 ②

「くぅ……。 こうなったら仕方がない。 再転生が良かったが、流石に確率が低すぎるからな。 異世界転生に希望を託すしかないか」


 正直異世界なんぞに行きたくはないが、虫になって速攻あの世逝きしたり、虫と交尾するよりかはマシか、と異世界用パンフレット。

 『異世界転生編』を開いてみる。


 異世界転生についての概要。

 今回ご案内します異世界は、魔王が魔物を操る魔王軍と戦いを繰り広げている世界です。

 しかしご安心下さい。

 柊ユウキ様が戦う必要はありません。

 先にご到着予定の英雄候補、『黒崎トウカ』様のサポートをするだけの、簡単なお仕事!

 彼女が先陣を切るので、あなた様に危険は及ば無いでしょう。

 更に柊様には特殊中の特殊なチートをプレゼント致します。

 戦闘向けではありませんが、このチートを使いこなせれば快適なスローライフが貴方の手に。

 以下、異世界転生に関する項目となります。

 

 1、40歳以下の場合、現在の容姿のまま転生。 40歳以上の場合は出産後からのスタートとなる。

 2、記憶は保持。

 3、チート能力を付与。

 4、身体能力のブースト。

 5、言語の自動習得。


「ふむ……つまり、要約すると……」


 黒崎トウカとかいう転生者を補佐すれば良いのか。

 そんでもって危険な事はやらなくても良い、と。

 戦闘向けのチートじゃないみたいだから、戦闘ではお役御免だろうし。

 あれ……なんか思ったより大変ではなさそう。

 むしろ危険がそんなに無いのなら、少し興味あるぐらいだ。

 ただ、こんな厚待遇なのが逆に怪しくもある。

 俺にここまでするメリットはなんだ。

 考えすぎな可能性も否めないが。


「なあ、ここに書いてるこれ。 戦わなくて良いって本当なのか? なんか怪しいんだけど」


「マジマジ、柊っちは後ろで控えてればオッケーっしょ。 てかサキサキは英雄候補だかんね。 柊っちじゃ邪魔にしかなんないと思うし? つっても護身用に弓とかナイフは持っといた方が良いと思うけどねー」


 英雄候補というのはよくわからないが、勇者的なものなのだろうか。

 だとすると、それに相応しいチートを持っている筈。

 なら……


「考えすぎか……」


「そそ! 考えすぎ、考えすぎ! んで、どうするか決まったん?」


 随分軽いノリで言ってくれる。

 だがお陰で覚悟が固まった。

 新しく歩む人生、その選択を。


「ああ、待たせたな。 でもようやく決まったよ。 異世界か、再転生にするのかを」


「じゃあ教えて貰おっかな! 柊ユウキ! 君の選択は!?」


「俺の選択……。 俺が選んだのは、こいつだ────!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る