第4話 カフェ 「織」
それから一時間目の授業が始まり、何となく授業を受けて昼休みになった。
「おい、泰叶。昼食べようぜ」
「うん」
颯真と机をつけて父ちゃんが作ってくれていたお弁当をおく。
「たっくん」
二人で食べていると七瀬と佐野ちゃんが教室の出入り口のところで顔を出した。
「どうしたの」
「たっくんと一緒にご飯したくて」
お弁当箱を持って七瀬が教室に入ってきて近くにあった椅子を借りて腰掛ける。
「まだ良いって言ってないけど」
「なんかさっくんって、花音に冷たいよね」
佐野ちゃんがそう言いつつ椅子に腰掛けてお弁当を机に置き開く。
「確かに。泰叶って、他の女子には優しいのに、七瀬には冷たいよな」
「何で?」
颯真と佐野ちゃんの二人からそう聞かれて返事に困ってしまった。
確かに父ちゃんからは女子には特に優しくするよう言われているからそうしている。だけど、七瀬に関しては小学生の頃に告白されたことがあるから、変に優しくして期待を持たせたら駄目だと思ってあえてこんな態度を取っていた。
「別にそんな事ないよ。俺は誰に対しても平等です」
「そうかなあ」
まだ何かを言いたそうな佐野ちゃんを誤魔化そうと瀧澤さんの話を振ってみることにした。
「そういえば瀧澤さんって、八重歯あるよね」
「うん、あるけど。つむちゃんのチャームポイントだしね」
佐野ちゃんは嬉しそうに瀧澤さんの話に乗ってきた。
「何だ、泰叶。瀧澤さんのことが気になるのか」
「いや、別にそう言うんじゃないんだけど。ただ、あの八重歯、可愛いなって。俺、八重歯のある女の子って好きなんだよね。笑った表情とか魅力的でさ」
何となく思っていることを言ってみる。すると佐野ちゃんが、花音にも可愛い八重歯あるじゃんと言った。
「あ、確かに。今気がついた」
「もう、酷いよ。たっくん、私のことみてなさ過ぎ」
そう言いながら七瀬が両頬を膨らませる。
「ははは、そうかも。だって、七瀬は俺なんかがみなくても他の男子からモテてるし」
「それは言えてるな」
俺の言葉に颯真もそう言って頷いた。
「陽葵ちゃん、瀧澤さんが来たよ」
そんな話をしているとクラスの女子が佐野ちゃんにそう言って話しかける。
「つむちゃん、どうしたの?」
教室の出入り口の方をみると瀧澤さんが少し不安そうな表情で立っていた。
「瀧澤さん、どうしたんだろ」
佐野ちゃんが瀧澤さんの方に駆け寄り、話をしている。
「瀧澤ってたまにああやって陽葵のこと呼びに来るよな。しかも、すぐに二
人で消えたりするし」
颯真とそんな話をしながら二人をみていると佐野ちゃんが俺たちの方に戻ってきた。
「みんな、ごめんね。つむちゃんが陽葵に大切な用事があるみたいだから行ってくるね。花音も、もう教室戻ろ」
「え、ああ、うん。わかった。じゃあ、また放課後にね、たっくん」
佐野ちゃんと一緒に七瀬も教室を出て行き、何となく颯真と一息ついた。
しばらくして昼休み終了の合図が鳴り、午後の授業が始まる。
授業中、先生の話半分に聞き流し、良いフレーズはないかなと考えていた。
放課後、ギターを背負い颯真と別れていつものカフェ織に向かう。
「いらっしゃいませ、泰叶くん」
「こんにちは、詩織さん。路上ライブまで時間あったので来ました」
店の中に入ると癒やされる笑顔で詩織さんが出迎えてくれる。
「カウンターで良いですか」
「はい」
詩織さんに案内されてマスターの智紀さんが居るカウンター席に腰掛ける。
「
智紀さんは他のお客さんの注文を取っている。
「あ、大咲先輩」
「あれ、瀧澤さん、どうしてここに居るの?」
注文を聞きに来てくれたのは瀧澤さんで、少し戸惑った様子で立っている。
「あの、最近、陽葵ちゃんの紹介でバイトを始めて」
「そうなんだ。瀧澤さんとこうやってちゃんと話すの初めてだね」
なんとなく話を続けていると詩織さんが近づいてきて、紬ちゃん、憧れの先輩が来てくれたんだから少し休憩行ってきても良いよ。智紀さん、別に良いですよね。お店は私一人でも大丈夫なのでと言ってくれた。
「良いよ、行っておいで。今は落ち着いてるから」
二人に促された瀧澤さんは戸惑いながら小さな声で、どうしようと言った。
「お言葉に甘えて。ちょっと瀧澤さんお借りします」
そんな瀧澤さんをみて興味が沸いた俺は彼女の手を取りカフェを出た。
ー続くー
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