第3話 朝
「陽葵は元気だな」
颯真がそれをみて呟く。
「瀧澤先生、おはようございます」
そして佐野ちゃんが瀧澤さんと瀧澤先生を連れて戻ってきた。
「おはようございます、皆さん。今日も勉強、頑張って下さいね。ほら、紬も挨拶しないと駄目ですよ」
「おはようございます、先輩方」
瀧澤さんが挨拶をしてくれる。彼女は佐野ちゃんや七瀬とは違って大人しい、そんな印象だ。
「では、僕はこれで。もし、相談事や聞いて欲しい話があればいつでもカウンセリング室に来て下さいね。待ってますから」
瀧澤先生はそう言って微笑むと先に行ってしまった。
「相変わらず、つむちゃんのぱぱは猫かぶりだね」
佐野ちゃんが面白そうにそう言った。
「うん、でも、仕事柄仕方ないってお父さんがいつも言ってるよ。教壇に立てない代わりに自分に出来ることをしたいって」
「四十過ぎてるのによくやるよね。でも、そんなところも圭くんの良いところかな。うちのぱぱとは大違いだよ」
そんな二人の会話を聞きながら下駄箱で靴を履き替える。
「それじゃ、陽葵ちゃん。私、こっちだから。先輩方もまた」
瀧澤さんがお辞儀をして自分の教室に向かっていった。
「瀧澤さんって、可愛いよね」
何となく小さく呟く。
「あ、さっくん、つむちゃんがタイプなの。でも、駄目だよ。つむちゃんは誰よりも可愛いけど、安易に手を出しちゃ。虜になっちゃうかも」
佐野ちゃんの言った言葉の意味がわからずに、どういうことと聞き返す。
「教えないよだ。それを知って良いのは私と圭くんとつむちゃんのままだけなのです」
校内にチャイムが鳴り響く。
「おい、チャイムが鳴ったぞ。早く教室入れ」
「あ、ぱぱ」
佐野ちゃんが佐野先生をみてそう言った。
「ぱぱって呼ぶな。佐野先生な」
「良いじゃん、陽葵には、ぱぱだもん」
佐野先生が、まったく、そういうとこばっか、お母さんに似てと呟き溜息をつく。
「陽葵さん、花音さん。おはよう、チャイムが鳴ったわ。朝礼始めたいから早く教室に入りましょうね」
「杏奈先生、おはよ。行こ、花音」
佐野ちゃんが七瀬の腕を取り教室に入る。
その後に颯真と教室に入って席に着いた。
「朝礼始めるぞ」
日直の号令で挨拶をして朝礼が始まる。佐野先生の話が終わり、一時間目の授業準備をする。
「大咲くん、おはよ。今日も夜にいつものところでライブするの?」
「うん、するよ」
十分休憩中、クラスの女子数名に囲まれる。
「じゃ、今日も行くね」
「あ、私も行くから」
路上ライブは高校生になってから始めた。それまでは動画投稿で音楽活動をしていたけど、動画のコメントで生歌が聴きたいと要望を貰えるようになったからだ。そしたらいつの間にか学校内で俺が音楽活動をしていることが知れ渡り、今では路上ライブにクラスの女子や他の学年クラス問わずに聴きに来てくれる人が増えた。
「ありがと」
そう言って微笑んでみせる。
「うわ、眩し」
「もう、大咲くん。安易に笑顔を向けちゃ駄目だよ」
一人の女子が倒れるふりをしてそうつっこまれる。
「いや、だって、聴きに来てくれるんだからサービスしないと」
「もう、大咲くん、格好良すぎだよ」
そんな事を言われて、別に俺は格好良くないよ。俺より、颯真の方が格好いいと思うしと返す。
「謙遜しちゃうところも良い」
結局何言ってもよく聞こえちゃうんだろうなと思った。
ー続くー
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