第8話エピローグ

「旦那様、お坊ちゃまがお戻りになりました」

 袋を持ったメイドがニコライの父を尋ねて来た。


 執事が袋を受け取り、伯爵に袋の中身を見せると、伯爵は確認しながら、


「そうか。やはり、そうゆう結果になったか」と独りごちる。


「有難い。最期は当家の墓に入れていいのだな」


「ええ、婚約破棄届は済んでいます・・わ。死亡届は病死が・・良いかと・・伯爵様・・シェリー様は・・燃える水の事業・・貴家と今まで通りと、賠償金は・要らないと仰せです・・伯爵様がニコライ様をいさめていたのは知って・・いました・・わ」


「有難い。シェリー嬢と今後の事を詰めようか・・私が言える立場ではないが、次の婚約者はどうするのだね。もう年頃の子息は完売しているが」


「ええ、まだ・・王家と大公家でシャリー様を待っておられる子息様がお・・ります」


「そうか、やはり、それほどの価値だったか。貴方方にとってシェリー嬢とは一体?」


「ええ・・ご先祖様のご恩返しです・・私にとっては、決して・・破ってはいけない・・口約束ですから・・」


 ☆約50年前

「土地の譲渡の交渉が決裂したら、軍事力を持って占領する。連隊長、我々は遂に、自衛戦争でない戦争をしなければいけないのか?」


「県知事閣下、もうデットラインです。異世界転移してから、皆の努力で、食料は何とかなりましたが、石油がなければ、我々は文明を維持できません!ご決断を」


 スレンダー伯爵家

「何だと、あのゴブリンを焼くぐらいしか役に立たない黒い水の土地を寄越せと、あの空飛ぶ鉄の怪鳥と、鉄の地竜をもってる輩が、何を言ってんだ?奴ら、山の略奪民族を瞬殺した奴らだぞ」


「スレンダー卿、如何しますか?こっちは騎士10人に、農民兵100人しかいませんが・・」


「よし、無料で渡すと、交渉をしろ」「御意」


 ☆土地譲渡調印式

 パチパチパチ

「困ったときに助けてくれるなんて、イセの民は貴方を真の友人として遇します。何か困ったことありますか?」


「(うわ、絶対に関わりたくない。問題を先送りだ)いや、困った時はお互い様です。もし、私の子孫が困ったとき、お助け頂ければ、それで結構」


「「「はい、絶対に万世一系、スレンダー家が続くよう我々はお助けいたします」」



 ☆15年前

「可愛い・・この子が・・シェリー様?ポーションかけて・・もっと元気に・・イタ!」

「こら、赤ちゃんにポーションをかけようとするんじゃーない」


「クスクス、ミヤちゃん。この子に、困った事が起きたら、お姉ちゃんとして助けてあげてね」


「も・・ち、モチ!」


「「ハハハハハハ」」


 ☆二ヶ月前


イセ辺境伯居城(元県庁)

「間者から報告、シェリー嬢、廃嫡の動きあり、敵、子爵子息であった父親の親戚連中です!」


「「「ぶっ殺じゃ」」


「かの王国に間接侵略を仕掛けるぞ。ミヤ、行ってくれるか?」


「ええ、シェリー様の敵は・・天地容れざる朝敵です・・わ」




 ☆

 王は書類に、婚約破棄届に、サインをしながら、侍従に尋ねる。


「全く、最近の貴族教育はどうなっている。ニコライといい。伯爵代行といい、12家の伯爵代行の実家筋が、爵位返却の申し出を出したぞ」


 ・・父親の実家は、ガラの悪い辺境伯系の寄子貴族から領地合戦を仕掛けられ、とても叶わないと自ら平民になる決断をしていた。


 約50年前にに突然、王国の北方、山に囲まれた魔物あふれる盆地に、異世界から集団が転移してきた、異世界のある国の一地方だったと言う。

 民は羊のように心穏やかであったが、厳しい異世界で、異民族や魔物に襲われているうちに、先祖返りをし、凶暴化していったという。


 王都上空まで鉄のドラゴンを飛ばし、鉄の馬無し魔道車で、近隣領地を闊歩して何かを探していた。


 スレンダー伯爵家は貧しく、特産品と言えば、燃える水が出る飛び地を持っていた。珍しいが使い道はコブリンを焼くぐらい。光魔法や松明の方が良い。臭い匂いもしない。


 彼らは、その土地を寄越せと交渉してきたが、すんなり、スレンダー伯爵家は提供した。だって、怖かったんだもの。鉄のパタパタと飛ぶ怪鳥で来られた当時のスレンダー卿は、要求を飲むしかないと判断した。


 しかし、それから、その民はスレンダー家に恩義を感じ、スレンダー家に何かあったら助けると約束、また、王国の辺境伯に組み込まれ、魔物を押させる役目をやってくれるようになった。

 さらに珍しい技術などを提供し、伯爵家だけではなく、王国も栄えるようになった。


 彼らは土魔法を使わずに土壌改良を施し、ドラゴンさえも屠る強力な騎士団を保有するようになるが、諸外国からは脅威には思われない。彼らは「せんしゅぼうけい」と称して、外国を攻めない。

 手を出さなければ、安全と思われている。いや実際にそうであろうよ。


 しかし、余りにも文明の度合いが違いすぎるので、辺境伯本領と民間の交流は、入る方は、鎖国状態でイセ領の「デージマ」で交流している程度。


「・・陛下、これは機密事項です。ニコライ様や伯爵代行程度の学力では、イセ辺境伯領の力を読み取れなかったのでは、噂話、魔法を使えない野蛮人としか認識していなかったかと」


「強いなら強いと言ってくれないかな?はあ」と機密を解禁するべきかとため息をついた。


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婚約破棄と外道なメイド 山田 勝 @victory_yamada

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