第7話ニコライの場合

「とても信じられない!」

ガクガクブルブル震えている3人を後にして、僕はガゼボに向かった。

シェリーがいた。何だ、使用人達が10人も付いているじゃないか?それにドレスも一目で高級なものと分る。

あれはメロディに相応しいものだ。


メロディの居場所を奪ったな。許せない。


「おい、シェリー、お前、外道メイドを使ってメロディに酷いイジメをしたな。許せない。こんな底意地の悪い女と結婚出来ない。婚約破棄だ。メロディの養子縁組の書類にサインをしろ」


シクシク、シェリーは泣き出した。肩をさするメイドは二人。

「お嬢様、お可哀想に」

「・・・どうなさり・・ますか?」


「うん。最初の頃は優しかったのに、もう後戻りできないのね」


「さあ、お嬢様・・お部屋に戻りましょう・・ね。後のことはお任せ下さい。先輩、お願いします・・ね」


「おい、待て、シェリー、まだ、話が終わっていないぞ」


ガサ、ガサ


庭木の陰から、3人の騎士が現れた。騎士服の上衣を肩で着流している者。上半身裸でサラシを巻いている者・・


「おい、おい~ニコライ様~~相手の話ばっかり鵜呑みにしやがってよ~~~スレンダー伯爵令嬢様の話を聞かないって無くねえぇ?」


「ニ~コライ、様よお、婚約者を信じなくて、どーすんのよ」


「お嬢、こいつがニコライ様?成績99/120って、プ、まだビリの方が可能性を感じる」


グリグリ、ポンポンとニコライを小突きだし、一方的に責めだした。


「ひ、卑怯だぞ!3人で責めるなんて」


「あら、シェリーお嬢様・は・もいつも貴方たち三人、いえ・・最、多くの人から一方的に・・責められていたわね・・」


「ク・・・」

ニコライは何も言えなくなった。


「ニコライ様・・貴方、最期のチャンスを逃したの・・教えてあげる。義妹の足を切るったのわ私、ミヤよ・・旦那様の内臓を飛び散らせたのは私、義母の皮膚を溶かしたのは、私、そして、貴方に・・何かをするのは・・たまたま、観光に来て・・私に会いに来たイセ騎士団の団員たちかも・・ね。頑張って彼らとお話してね」


「へ、イセ騎士団、お前らは外道騎士団、お前らは辺境に籠もっている田舎者じゃないのか?」


外道騎士団、イセ辺境伯騎士団の異名で、修練場に、魔物の生首を飾って修練する。駐屯地上を通るドラゴンに、鉄のツブテを撃って討ち取る等々、逸話の絶えない野蛮人だ。


「外道?あ~~~侮辱された。決闘だ。決闘!」


「僕は貴族だぞ。何かあったら父上が許さないぞ」


「僕は平民だぞ(笑)。何かあっても父ちゃんは自分で何とかしろと言うぞ(笑)」


「ミヤお嬢、婚約破棄書にサインさせてから、決闘させる?」


「いや・・いいわ・・指を取って血判をとれば問題・・ないわ」


ポンと刀をニコライの足下に置かれた。


「拾え、拾わなくてもいくぞ!」


「チェストーーーー!」


「ニコライ様、剣術の稽古もなさいませ」

「うるさい、僕は貴族だ。僕を守る衛兵の仕事を奪ってどうする。不愉快だ」

プイ。

__________________________


最期、ニコライは切られる瞬間、シェリーとの思い出が脳内に浮かんで来たかのように呟いた。


「シェリー・・・」


「・・最期だけは・・戻ったようね・・」

「姐さん。ポーション掛けますか?」

「もう無理ね・・・だって、首がね・・」


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