第9話 死闘の試練③・稲妻を纏う勇者祐樹

その頃、ティアナ達は現状の状況を常に聞き入れていた。


「なるほど、6人が死にましたか」

「はい、すでに勇者グループの二つ目を発見、合図があれば、すぐにでも襲う準備ができております」

「なら、すぐに……」

「はっ!!」


勇者6名の死亡、さらに勇者グループ二つ目の発見、予想以上に早い。

これでは三日を持たずに全員、死んでしまう。

とはいえ、さすが、勇者、回りくどいものもいるようだ。

それに、グループで動いていないものが数名いることも確認できている。


「私たちはしばらく待機、第二部隊が帰ってくるまで、私の指示を待ちなさい」


『はっ!!』


二つ目の勇者グループを見つけた第二部隊は、ティアナ団長の指示を待っていた。

そして、一人の団員が駆けつけ、ティアナの指示を代弁した。


「ティアナ団長の指示です、すぐに…と」

「よし、ティアナ団長の指示が来た、いくぞ!!」


『お〜〜!!』


団員達は森を駆け抜け、勇者のグループに突撃する。


「なんだ!?」

「くそ、もうここまで来やがったのかよ」

「迎え撃つぞ!!」


ティアナ騎士団と勇者グループとの死闘が始まった。

その光景を私、ひなのはただ傍観していた。


「どうして、グループで動いたんだろう?」


この死闘の試練、明らかにグループで動くのは得策ではない。

特に弱者の群れで集まるくらいなら、一人で行動したほうが、気配を消しやすいし、見つかりにくい。


しかも、相手は只者ではないティアナ騎士団、相当上位にいる勇者でもない限り、ほぼ一択で一人行動が得策だろう。


「まぁ、私の場合はそもそもグループを組む、友達がいないのだけど…」


それにしても、なんと恐ろしい探索能力、試練が始まってすぐにグループの一つ目が見つかり、これで二つ目、1日で二つも見つかるとなると、これでは三日後には全滅も視野に入る。


「できる限り、戦うのは控えよう、特にティアナ騎士団の団長さんだけは…」


それにしても気の毒だよね、あの勇者グループ、あんまりあの人達の名前は覚えてないけど。


「まぁ、検討を祈るよ」


私はそのまま、別の場所へ移動した。


「くそ、強すぎる」

「ねぇ、どうするのよ」


生き残った勇者は二人、そしてティアナ騎士団に囲まれる。

もはや、絶望的状況だ。

すると、稲妻がティアナ騎士団を襲った。

その稲妻は早く、一瞬のうちに騎士団達を怯ませた。


「大丈夫かい?間に合ってよかった」

「どうして…」

「もちろん、クラスメイトのピンチを助けるのは当たり前…だろう?」


勇者祐樹がピンチの状況である二人の前に姿を現した。

見たことのない鎧を身に纏い、片手には稲妻を纏う剣を携えていた。


「そうか、君が勇者祐樹か」

「これで以上、殺させやしないよ、ティアナ騎士団」

「なるほど、だがこの数の中で、勇者祐樹、君はどうやって切り抜ける?」

「僕は勇者だ…切り抜けられないものなどない!!」


稲妻を纏う剣を振り下ろすと、その地点に大きな落雷。

視界が眩い光で覆われ、視界が暗点する。


「くぅ…なっ!?」


視界が開ければ、そこには勇者たちの姿はなかった。


「足跡の痕跡もない、やられたな……」

「どうしますか?」

「うん、一度、団長の元まで帰還し、情報を共有する」

「了解!!」


勇者祐樹、情報でかなりの強者と聞いてはいたが、ここまでとは…しかも見た感じ、スキルは複数所持の可能性が高い。


「ふん、少しは死闘のしがいがありそうだな…」


その場を切り抜けた勇者祐樹と生き残った二人は祐樹の案内のもと、祐樹グループと合流した。


『ありがとうございます!!』


「お礼の言葉は不要だよ、それより今は休息をとったほうがいい」


二人は祐樹の言葉に甘え、休息をとった。


「さてと、緊急会議が必要だね」


とある洞窟により優れた勇者祐樹を合わせた計5名が集まっていた。


「おいおい、俺たちが集めたってことは、やられたのか?」

「ああ、すでに6名がやられている…このままでは三日も持たないだろう」

「であるなら、やはりここは我らで一致団結する時、ということだな」

「そうの通りだよ、隆元りゅうげん

「しかし、未だ我々の人数は10名…これでは少なすぎる」

「うん…やはりこちら側も反撃に出るしかない」


「それは反対だ、ただでさえティアナ騎士団の団員は強い、下手をすれば、大きな被害になりかねない」


「いいや、俺は賛成だ…今のままでは消耗戦となり、より我々が不利なることは目に見えている、今こそ戦うべきだ!!」


双方の意見が飛び交う。

それもそうだろう、なんせクラスメイトがすでに6人死んでいる。

顔には出さないが皆、死を恐れているのだ。


「戦う考えは確かにわかる、だが今の僕たちの力では限界があるだから…こういうのはどうかな?」


作戦はこうだ、あくまでこの場所を移動せず、ティアナ騎士団を見つけ次第、反撃し撃退する。

いくらティアナ騎士団でも団長を前に出すとは考えにくい。


「どうかな、この作戦?」

「その作戦なら、問題ない」

「俺もそれでいいぞ」


他の皆も、賛成してくれた。


これにより、作戦は新たに切り替わり、この拠点を中心に防衛をはり、ティアナ騎士団を見つけ次第、報告し、反撃することになった。


勇者祐樹は作戦が決まった後、外を眺めた。


「祐樹?どうした…急にボーとしてよ」


外を眺めていると勇者健が話しかけた。




「ああ、少し気がかりがあってね」

「気がかり?」

「あまりにも出来すぎている気がしてね、この流れも全て誰かが意図的に生み出している、そんな気が…」

「気のせいじゃねぇのか?」

「さぁ、ねぇ僕の気のせいかもしれないし…これに関しては確信が持てない」

「ふん、まぁそんな気にすることでもねぇだろう、あともうそろそろ防衛の交代の時間だから、忘れるなよ」


「ああ、わかってるよ…」


本当に気のせいなら、いいけど。

気づけば夜空は暗くなり、星が輝いていた。


「動くとしたら、明日かな…」


ティアナ騎士団の動きは常に警戒していたし、動きから見ても1日目は戦力調査と位置の確認をしていたんだと思う。


「ティアナ騎士団の団員の力は未知数だ、特に……」


部隊を率いていた団員、隊長は他の団員とは力の差があった。


「よし!!明日も頑張るぞ!!」


勇者祐樹は笑顔で拳を夜空に向けた。

そして死闘の試練、二日目を迎える。


「ティアナ騎士団を発見したぞ!!」


朝からティアナ騎士団を発見したという報告を受けた俺たちはすぐに皆を集めた。


「ここはやはり迎え撃つべきだ!!油断している今なら!!」

「いや、ここは泳がせるのが先決だと、俺は思うぞ…」


またもや、双方の意見が分かれた。


「皆、落ち着いてほしい…正直、僕も今回は泳がせるべきだと思う」

「なっ!?なんでだよ!!」


「おかしいと思わないか?朝からティアナ騎士団が俺たちの拠点の周りを徘徊している、これはほぼ拠点がバレていると思っていいと思う…だからこそ今、動くべきではない」


とはいえ、なぜ僕たちの拠点周りを徘徊している理由がわからない。


理由があるとすれば、やはり、僕たちを拠点から外に出したくないが妥当だろう。


「いいかい、今僕たちが仲間割れをすれば、本当に僕たちは全滅する…それこそティアナ騎士団、団長と死闘をすることにでもなれば、全滅は間違い無いだろう…だから今は僕の指示に従ってほしい」


大人しく従ってくれるといいのだけど…もし従わないのなら、強行手段も視野に入れて考えないといけなくなる。


「わ、わかったよ…」

「ありがとう…健たける」


おそらく、今日中には僕たち以外の勇者は殺されるだろう。


「ここまでやるか、ティアナ騎士団……」

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