第8話 死闘の試練②・疾走する紅の槍
勇者の皆は緊張した空気を漂わせる。
それもそうだろう。
俺は平然と話しているが、ほとんどの騎士の人たちは基本ティアナに関わることはない。
それどころか、避けられる始末、その原因がまぁ、雰囲気だろうな。
案外、話してみれば、可愛げなところもあるのだが……。
「あっ…そういえば自己紹介がまだでしたね、私たちはティアナ騎士団、そして私は団長のティアナと言います、それでは早速、試練の内容について説明させていただきます…」
勇者は息を呑んだ。
「この試練の名は死闘の試練…そして期間は3日間、その間はあなた達には私が率いるティアナ騎士団と死闘を行ってもらいます、そしてこの三日間、生き残れば、あなた達は勇者として更なる領域に至るでしょう、そしてこの死闘の試練の敗退条件は死のみです…さぁ死闘は私が合図を出した時です、その間までに罠を貼るもよし、距離を取るのもよしです…さぁ死闘の試練を始めましょう」
その言葉とともに勇者達はいくつかのグループに分かれ、皆が森の中で入っていった。
「それにしても、こうも、簡単に受け入れるなんて、本当に死ぬ覚悟はできているのだろうか」
「来ていたのですか?」
「それは、まぁ〜〜一様、発案者なので、じゃあ、俺は遠くで見守らせていただくよ…」
「ええ、では我が、真勇たちよ!!ここに試練の開始を宣言する!!手加減などいらない!!命乞いなど無視しろ…勇者を見つけしだし、殺せ!!」
ティアナがあげた声は団員に響いた。
『はっ!!お任せください…偉大なる我らが団長…ティアナに栄光!!ティアナに勇気を!!』
ティアナ騎士団達が動き出し、試練が始まった。
「はぁはぁはぁ、くそ!!来やがった!!」
「なんて速さなの!?」
「くそっ!!迎え撃つしかない、お前ら戦闘準備だ!!」
早速、ティアナ騎士団に見つかった、6人グループの勇者達。
すぐに追いつかれると判断し、戦闘準備にはいった。
「思ったより、すばしっこいね」
「ああ、さすが勇者と言ったところか、だが我々はティアナ騎士団だ、その強さを、勇気を見せつけなくてはいけない、そのためにも彼らには最初の犠牲となってもらう…」
追われた勇者達は足を止めて、向かってくる敵二人を迎え撃つ戦闘態勢に入った。
だがその判断は愚策だった。
「おいおい、どうなってやがるんだ…」
追ってきたのは二人だけ…そう思っていたのが仇となった。
「ねぇねぇ、どうするのよ」
すでに勇者達は10人以上の敵に囲まれていた。
そう勇者達は前しか見ておらず、左右、前の警戒を置き去りにしていたのだ。
「くぅ……」
「実に素晴らしい、素早さだ、勇者…だが私たちの長所は足でね、さぁ死闘を始めようか」
「こんなところで死ねるかぁ!!やっと俺の人生に運が向いてきたんだからよ!!」
勇者6人が陣形を取った。
それに関しはいい判断だ。
この数相手に、無鉄砲に攻撃を仕掛けるのは、愚策の中の愚策だ。
とはいえ、この人数有利の状況は変わらない。
ティアナ騎士団の猛攻に勇者達は本領を発揮できずに殺されていく。
「やだっ!!死にたくなっ…」
鋭い槍が心臓を貫いていく…躊躇もなく…。
「一人だけ、森を駆け抜けていきましたが、どうしますか?」
「俺が追う、お前達はこいつらの処理をしろ」
「はっ」
「さて、追うとしよう」
そして勇者が逃げた駆け道を駆け抜けた。
「くそ、あんな化け物なんか、勝てるわけがなぇ」
すぐそこにある大きな木に身を潜める。
「ここまでこれば…大丈夫だろう」
ひとまず、息を整え、今身に置いている状況を整理する。
このままではまず、生き残ることはできない。
からと言って、一人で三日間、身を潜めるのは危険だ。
ここはやはり……。
「他のグループと合流…これしかない」
しかし、この森はかなり広い、そう簡単には見つからないだろう。
それどころか、敵に見つかる可能性もある。
「そこまでだ、勇者…」
「!?」
どうして、もう追いついてやがるんだ!!
「逃げるなら、足跡、匂い、魔力の残滓ぐらい消しておくんだな…さぁ、これは死闘の試練、勇者、覚悟を決めて、死闘をしようか」
「くそ、舐めやがって…」
相手は一人だ、一人ならまだ勝つ可能性はある。
「こんなところで死ぬわけにはいかないんだよ…」
「ふん、その心意気よし…」
勇者は剣を構え、相手は槍を構えた。
剣と槍、一見、距離を取れる槍が有利と感じるがその認識は少し違う。
槍は確かに距離を取ることで考える余裕もできるし、何より、攻撃する丈に剣と差がある。
だが、弱点として懐に入られると槍が長いため、防ぐことが難しいという点がある。
勇者は正面から近づいてきた。
警戒すべきはスキル……だが。
その剣は何事もなく降り掛かってきた。
すぐに槍で弾き、できた隙を槍で貫いた。
「これで終わりだ…」
確実に貫き、勇者は血を吐く、そして俺も大きな痛みに襲われた。
「ぐはっ…これは…」
俺は口から血を吐いていた。
「ははは、バカが、」
勇者を見れば、勇者も血を吐いてた、それもそうだろう、だって槍で貫いたのだから。
だが、なぜ俺も血を吐いている?
考えられる可能性は一つ……スキルだ。
「みたか、これが俺のスキル『殺傷共感』だ、さぁ殺してみろよ、俺を殺せばお前も死ぬぜ」
「なるほど…」
これは恐ろしいスキルだ、決して戦闘向きではないが、間違いなく強力なスキルだ。
だが、彼がスキルについて教えてくれたことに感謝しなくてはいけない。
「勇者、君に一つ教えてあげよう」
「あっ?」
「死闘において、スキルのことは相手が死ぬまで教えないことだ……ティアナ加護をここに、貫け、絶槍!!」
彼の持つ槍が赤く輝き、その槍を勇者に向けて疾走した。
「はえ?」
「『ティルグ』」
紅に輝く光の槍が勇者の横を疾走した。
そして気付かぬうちに勇者の体は半分に裂かれていた。
「なんで、俺のスキルが…」
「俺にはスキル『自己再生』がある、君がスキルを発動すると同時に自身にスキルを発動させたのさぁ…言っただろう?スキルは教えないほうがいいと…」
「ばけ…も…の」
「ふん、俺なんかに化け物だなんて…言い過ぎだよ、て…もう死んでるか」
勇者6名が早くに死亡した。
これは順調だと言える。
俺に取ってはだけどね。
「さぁ、もっと死闘を繰り広げてくれよ、勇者達……」
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