第7話 死闘の試練①・ティアナ騎士団

勇者達が召喚された翌日、俺は勇者達の名前と顔のすり合わせを行っていた。


「30人もいるのか、」


今回の勇者の世話係はガルル騎士団、団長・ガルルが受け持つことになった。

この人選に関しては意外だった。

別にガルル団長に問題がある訳では無い、ただ……。

こういう勇者の世話係はだいたいティアナ騎士団が受け持つことが多かった。

まぁ別にだからって話だけどな。


こうして次の日、勇者達にはこの世界のルール、スキルについてガルル団長が教えていた。


「へぇ〜〜ガルルのやつ、意外と真面目に教えている…意外だ…」


それにしても今回の勇者は骨が折れそうだな。

スキルに関しては申し分ないが、今回は数が多い、となると問題になるのは人間関係。


「仲間割れにならなければいいけど…」


それから訓練は順調に進んでいく。


「そろそろ、能力値の差がで始める頃合いかな……」


いくら勇者でも必ず、能力値の差というものがある。

それには強ければ強いほど濃く、目立って現れる。

ほら、勇者の何名かが訓練についてこれず、倒れていく。

訓練の最中に俺は一人、気になる勇者を見つけた。


「あの子、かなり特殊だ…」


周りから仲間として見られていない、まぁそれはよくあるパターンだが……認識されていない。

誰もが彼女を認識していない。


「なるほど…彼の仕業か…」


これはまた荒れそうだと思った。


「君…大丈夫?」


俺は今でも倒れそうな勇者に手を差し伸べた。

俺は心の底から願った、どうか勇者達よ、無事に試練を乗り越えてほしいと。

そう、1週間後に行われる、死闘の試練を……。


俺は珍しく、王城で一夜を過ごすことにした。

特に理由はないが、まぁ勇者がいるからが最も俺らしい理由だろう。


「うん、明日もいい日になりそうだ」


月を見上げ、空を見上げ、その輝きを眺めていた。


「似合わないですね…」

「うん?なんだ…ティアナかぁ」

「不満そうな声を出さないでください」


夜空を眺めていたところに普段見ない服装で話しかけていきた。


「ティアナがこんな夜中に話しかけてくるなんて、珍しいな」

「ちょうど、見かけたので…それにあなたに確認したいこともあったので…」

「確認したいこと?」

「ええ、勇者達に試練を与えるのは1週間後、しかし…本当にいいのですね?」

「ああ、構わないよ、責任は俺が取るし…」

「あなたに責任が取れるとは思いませんが…」


「ひどいな〜〜……けど勇者達の試練、手を抜くわけにはいかない、安心しろ、俺はやる時はやる男だ、安心して勇者を殺せ……これは王国のためだ、今回の試練でより強い勇者だけを残し、雑魚を処理する、これによって食料費なども抑えられて一石二鳥だ」


「私としては出来れば、殺したくないのですが……わかりました」

「さすがティアナ…安心しろって後悔はさせないさ」

「はぁ〜〜では確認したいことは済んだので、これで…」

「そうだ…最後に一つだけ…」

「なんですか?」

「手加減はするなよ、そしてティアナ…最悪の場合は君の槍を使ってもかまわない」


その言葉にティアナは驚愕する。

彼が発する誠意、彼は本気だった。


「そうですか…なら、しっかりと被害が大きくならない場所を用意してください…」

「ああ、それに関してはとびっきりの、試練に適した場所を用意してある…」


ティアナはそのまま帰って行った。

あのティアナが勇者を心配するなんて…本当に優しくなったな。


「この試練、本物の勇者は何人残るのか、楽しみだ……もしくは…」


誰も俺の真意なんて知らない、知っていたとしても、それを気にする人なんていないだろう。

この試練、俺は好き勝手をする。

こうしてあっという間に1週間が過ぎた。

そしてついに試練決行日を迎える。


「ガルル団長?ここで何を行うのですか?」


と祐樹は尋ねた。


訪れた場所は王国から離れた遠く離れた場所、虚空の森という場所で、ただただ森林が広がっている森だ。


「勇者の皆様方にはこの1週間よく訓練に耐え抜いた…そして今日行う訓練は我々王国最強の騎士団、ティアナ騎士団との模擬戦での訓練となる」


「ティアナ騎士団?」


「そうだ…ティアナ騎士団は各地を巡り、王国領土内全てを守っている誰もが、王国でティアナ騎士団こそ最強というだろう、そして今回、勇者の皆様方には模擬戦での死闘を繰り広げてもらう」




『死闘!?』



勇者の皆が驚愕した。

それもそうだろう、だって今から始めるは模擬戦ではない。

死闘なのだから。


「それって模擬戦ではないような気がするのですが…」

「ふん、そうだな…私もそう思っていた、だがこれはすでに決定事項だ、すまんな」


ガルル団長は軽く謝罪した。

しかし、勇者の皆は逃げなかった。

そして森の中を歩く中、ガルル団長は歩く足を止める。


「ここからは勇者の方々のみで進んでいただく…そしてこの先にはティアナ騎士団がいる、主な詳しい内容はティアナ騎士団から聞いてくれ…」


「わかりました…」


そして私たちは森の奥へと進んでいく。

すると広い空間に辿り着いた。

不自然なほどの広い空間、森の中で唯一、木も草も生えていない。

そしてその中心には大勢の集団が待ち構えていた。


「ようこそ、勇者の方々、これより試練の内容を説明します…」


大勢の中で一際目立つ、鎧、右手にもつ紅の槍。

私たちですら、直感で理解した。



この子はだと……。

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