第3話 30年の付き合い、謎のアロン
荒野に向かった理由、それは魔物の現在の行動範囲の確認だ。
まぁ、普通ならここに来たところで何もできないのだが、俺には勇者召喚時に獲得したスキル【千里眼】がある。
俺なら基本、遠くの場所を見ることができるし、それに魔力痕なども見えるまさしくサポーター向けのスキルだ。
「う〜ん、やっぱり、少しづつ押し寄せている…」
これはあと数年で魔王が生まれてくる、いやもう生まれているのかもしれない。
「今回の魔王はやっぱり……」
それから数時間が過ぎ、気づけば、お昼の時間を過ぎていた。
「流石に、戻るか〜〜」
結局、得られた情報は大したことがなく、無駄な時間を過ごした気分だ。
「なんか、美味しいものでも食べるかな〜〜」
荒野を離れ、エルキザレオン王国内に戻ると、何やら騒がしいではないですか。
何かやっているのだろうか。
少し覗き込んでみると、腕相撲大会が行われていた。
筋肉ムキムキの男とごく一般的な女性が手を重ねていた。
「おっ、ちょうど始まるところか…」
しかし、あの女性、なかなか……。
手を重ね終えた二人は、お互いに睨み合う。
「では、レディー・ゴー!!」
審判の掛け声と共に、両者二人は互いに力を加える。
普通に見れば、筋肉ムキムキの男が勝つだろう、けど相手が悪い。
次の瞬間、男は思いっきり手を机に打ちつけられ、そのまま倒れ込んだ。
「勝者!!アロン!!」
その審判の声に周りの多くの民衆が大声を上げた。
多くの歓声、誰もが彼女の勝利を確信していたのだろう。
「よくまぁ、これだけ盛り上がるよな…」
するとアロンがこちらに気づいたのか、ニヤリと笑う。
あ、ヤッベ、これは素早く退散するかな。
「ちょっと待ちなさい…」
後ろ振り向いた瞬間、俺は肩をがっちりと掴まれた。
「久しぶりね、真也……」
「ああ、久しぶりだね、アロン、おっといけない、急用な用事があったんだ!!久しぶりに会えた中、悪いんだが私はここで退散させてもらうよ」
「あら、そう…でも確か真也って今日の夕刻に大事な用事があったような気がするのだけれど、それなのにこの後に用事があるの?おかしいな〜〜」
「ぐぅ…」
こいつ……。
「じゃあ真也、一戦、やりましょうか?」
「はぁ〜〜わかったよ…」
アロンは俺が勇者だった頃に知り合った知人だ、戦うことを好む性格でもう30年の付き合いになる。
見た目がどこにでもいる村人なので油断しがちだが、見た目に比例せず、普通に強い。
どうしてアロンがここにいるのかはわからないが……それにどうして勇者召喚の日を知っているのか。
ああ、こわいこわい。
俺は大きな箱の上に肘を置く。
「言っておくけど、本気できてよ…」
「本当に君は…手間のかかる子だな」
アロンも肘をつき、手と手を重ね合わせる。
これで準備完了だ。
「では、レディー〜〜〜〜〜」
お互いにニヤリと笑う。
ああ、本当に………。
「ゴー!!!!」
お互いに力を入れる、するとお互いの力が衝突し、拮抗状態になる。
「おいおい、アロンさんと互角だぞ、あいつ…」
「スゲェ〜〜」
アロンの力は絶大だ、昔とは比べ物にならないほどに強くなっている。
拮抗状態の中、少しづつ、俺が押され始めた。
これは流石にやばいな。
アロンの力は俺の予測を超えていた。
「これが今の私の全力よ…真也」
「ああ、すごいな本当に…」
やばい、やばい、押されていくたびに、力が抜けていく、このままでは持っていかれる。
最初はある程度、いい勝負に見せて勝つつもりだったが、そんな余裕はない。
「アロン、確かに強くなった…この数十年間、君の努力がよく伝わるよ、でも…」
すると少しづつ追い詰めていたアロン…だがアロンは次の瞬間、違和感に気づく。
あれ?どうなっているの……。
少しづつ、真也の腕が上がっていく。
力を抜いているわけではない、なのに上がっていく。
そして気づけば、拮抗状態まで元通りになっていた。
「なっ!?」
「さぁ、ここからが本番だぜ…」
微かに纏う赤い闘気がアロンには見えた。
これはまさか…スキル。
「一つ質問いいですか?」
「勝負中に何だよ…まぁいいけど」
「まさかだと思いますが、スキル使ってます?」
その言葉を聞いた、俺は満遍な笑みを浮かべる。
「や、やっぱり…」
「まぁ、禁止なんてルールはなかったしな…」
「くぅ…」
「じゃあ、そろそろ終わらせるぞ」
真也の腕に力が入ったのを感じた。
そして次の瞬間、思いっきり机に手を叩きつけられた。
「俺の勝ちだ…」
「勝者!!真也!!」
この真実に周りは驚愕を顕にする。
「スキルを使うなんて、卑怯ですよ…」
「ふん、ルールに書かないのが悪い、それにこっちがスキルを使っているんだ、アロンも使えばいいだろう?」
「私…基本、死闘以外ではスキルを使わないと心に決めているので…」
「あんまり、変なプライドを持つと……早死にするよ」
「安心してください、時と場合は弁えているつもりなので…」
「ならいいが…」
時間を確認するとも16時を過ぎていた。
勇者召喚は夕刻、ちょうどいい時間だ。
「じゃあ、俺はこの後用事があるから、ここでお暇させてもらうよ」
「次に会ったときは必ず、勝つから」
「ふん…」
俺はそのまま勇者召喚の儀式が行われる、王城に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます