第12話 逃げて逃げて逃げまくる

「第二ラウンド、第一回戦、終了〜!!勝者はぁぁア!ミラクルダークホース!名無しさんです。いやー、みっともない勝ち方でしたねほんとぉ!」


 俺は第二ラウンドを第一ラウンドとほぼ同じような感じで勝利した。さらに、今回はウィークをゲットしていたため、相手も慢心して無駄な動きばかりして結果、早く疲れが出てきてさっきよりも試合が早く終わった。俺は待合室に戻ろうとする。すると


「さーて、次の試合まで筋トレを、」

「名無しさん。と言ったかな?ちょっと話はしたいんだが。」


 後ろから声をかけられた。恐る恐る後ろを振り返るとそこには、さっき、イッパン・モブエーをフルボッコにしたやつ。ダルタ・ジュージが立っていた。


「い、いいきなりなんですか?ぼ、ぼぼぼぼくに話すことななんなんて!」

「まあ、あるんですよ。それが。」


 俺はウィークを使い、超ビビりな感じで話した。しかし、彼は一切の表情を変えずに真顔で言い返す。やりおるコイツ!


「ええええっとお、話したいここことっってななんですか!?」

「まあ、ここじゃ誰かに聞かれる可能性がありますね。場所を変えましょう。あと、僕にビビったふりは聞かないですよ?」


 あれ?俺ウィーク発動してるよね?嘘やろ?やりおるコイツ!(2回目)

 パワーの説明にも見破れるのはかなりの猛者って書いてあったよね?なのに見破られたってことはこいつかなり強いんじゃね?ヤバ!逃げよ!


「ええええっっと……………また今度で!!!」

「ああ、逃げられた。」


 俺は足の内部の筋肉を超人化させる。これでもウサインボルトを超える速度はあるだろう。しかし、奴は俺の前にいた。


「あの、ちょっとだけなのでなんとかお話出来ませんかね?」

「え?え?あ、あなたささささっきまであそこにいましたよね?」

「ええ、早かったですよあなたは。でもあの程度の速さじゃ私を撒くことは出来ませんよ。そんな簡単な暗殺業をやっているんじゃないですから。」


 ヤバっ!こんな奴と話って物騒な予感しかしない!でもこいつ速いしな。でも、一旦足だけ人間の範疇内でムキムキにならせて走るか。そしたらなんとか次の試合までの時間稼ぎはできるだろう。幸いな事に俺は人一京倍くらい体力が多い。


「ぼぼぼぼくは…あなたと話すことなんてありません!!それでは!!!」

「あらら、また逃げられちゃった。しかもさっきよりも数十段速いな。僕って嫌われているのかな?」


 俺は必死に走る。足を必死に前に出す。だけど、だけど!奴は目の前にいた。足音すら立てずに、化け物かコイツ!もう話聞くしかないのかな?


「なんでぼぼぼぼくにそんな執着するんですか!?」

「あなたこそなんでそんなに逃げるんですか?別にちょっとぐらい話したっていいじゃないですか。もうこれ以上逃げたら貴方の脚を切り落としますよ?」


 怖っ!893かよ!まあやっていることは似たようなもんか。というかあまりにも速すぎないかコイツ?見た目は細マッチョぐらいなのに。さて、どうしたもんかねぇ。俺はこの状況の打開策を練る。その結果。


「はい、降参します。なんの要件でしょうか。」

「聞き分けがいいですね。こちらとしても助かります。」


 結局要件を聞く事にした。考えてみれば逃げることもないな。彼は殺し屋であって快楽殺人鬼というわけではない。依頼を受けているから殺しているんだ。


「で、要件というのはですね、この試合、あなたに棄権してほしいのです。」

「へ〜。」


  さらっと受け流してしてしまったが理由がいまいちわかんない。まあ聞けば済む話なんだけども。


「なんで僕が棄権をしきゃいけないんですか?」

「……今回の闘技…そこのとある選手を殺してほしいと依頼が来ましてね。それでこの闘技の選手として参加したのです。まあとある選手というのはザルコンという奴でして、さっきあなたが倒した人です。私の考えではザルコンが試合を勝ち進んで私と闘う……という流れだったのですが、それをあなたが止めてしまった。そしてそのせいで私とあなたが闘う事になってしまった。ここまではいいですね?」

「はい、まあ、わかりました。」


 成程ね。俺がそのターゲットを倒して予定が狂っちゃったのか。悪いことしちゃったな。まあ俺は悪くないと思うんだけど。俺だってこの後、森とかに行ってモンスターを倒す、とかの予定があったのに全部あのスカウトマンのせいで丸潰れになっちゃったんだから。恨むならスカウトマンを恨みなさい。ところで、ザルコンって実は強かったの?


「それでですね。あなたにはとても大きいノビシロを感じています。あなたを再起不能にするのが惜しいくらいに。だから今回の闘技、棄権してほしいんです。」

「あ〜、だいたい理解しました。」


 お〜、ここまで俺を褒めてくれた人は懐かしいな。だがしかし、俺はここで棄権するわけにもいかないのだよジュージ君。なんて言ったってこれで優勝したら莫大な金が手に入る。そうしたら筋肉を鍛えるための器具、特注のメリケンサック、プロテインが買えるのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る