第8話 ニュー生活スタイル

「ハッ!私は一体何を?模擬戦は?」

「ああ、気がついたんですね。よかったです。」


 気がつくと私は医務室のベッドに寝かされていた。治療師さんの話によると私はあの筋肉巨人に殴られて気絶したらしい。あの筋肉巨人。得体の知れないオーラを出していたから気になって模擬戦を申し込んでみたが、そこまで強いとは。私だって一応4ランクよ。それもたった半年で12ランクから4ランクよ。

 私はいまだに自分が敗北をしたことを飲み込めていなかった。それもそのはず、私はいわゆる天才。『魔法系パワー大全』という稀なユニークムーヴメントを持ち、それを十二分に活躍させてここまで一度も負けずにやってきた。それをあの男に、たった一発で…………。



 素晴らしい!



 私は『頭脳派系戦闘狂少女』と幼少期で呼ばれるほど頭が良くて顔も良くてその分人間とやや違うところがある。私はいつも戦闘に飢えていた。ただ強そうな人を見ては模擬戦を申し込み自分より強かったら着いて行って自分より弱かったら『ふ〜ん。まあまあね。』とだけ言って立ち去る。これを10年間くらい続けてきた。今まで一度も負けたことがなかったのに………。ああ素晴らしい!!これは一生付き添いにならなければ。


「すみません。 治療師さん。」

「はい、なんでしょう。」

「私を倒した人はどんな名前ですか?今どこにいますか?一体どうやって私を倒したのですか?」

「ええとですね。名前はタケミチアツシといってあなたが起きた時にはもう街のどこかへ行ってしまいました。 模擬戦ではあなたの腹に拳を当てて倒していました。内臓が結構損傷を食らっていたのですが回復魔法をかけただけでもう起きるなんて、さすが街1番のべっぴんさんの嬢ちゃん様ですね。」


 なんと!私を……私を腹パンで……一撃で!?……素晴らしい!素晴らしすぎます!ああ、体が震えて止まりません。是非とも、是非とももう一回手合わせを!彼を絶対に探し出さなくては。私の気が済みません。ああ、会いたいです!!!!!!!!!


 でも、この性格は絶対に出さないようにしないと。気味悪がられてしまうかも知れません.





◇◇◇





「あの、淳さん?大丈夫ナス?」

「アードウシタンダイナスビクン。ボクハゼンゼンヘイキダヨ。」

「やっぱりさっきのブーイングの嵐が心に響いているナスね。心中お察しするナス。」

「ベツニーボクハイクラ『オイ!反則やろう!』トカ『この筋肉サイボーグが!力加減を知れ!!!』トカイワレタッテゼンゼンキニシナイカラ。ナレテイルシ。」

「ああ、今はそっとしておくのが得策ナスね。」


 僕らは模擬戦が終わった後、ブーイングの嵐を喰らった上に、〔戦人者の集い〕の広間に行ったら、一発で彼女を倒したのと女子に遠慮なく気絶するレベルの腹パンをしたせいでみんなから謙遜されたりとか、冷たい目で見られることになってしまい、俺の面接をしたおじいちゃんも苦笑いをしていた。あの子そんなに人気だったの?まあ確かに美少女だけども。


「なあナスビ、これからどうしようか。」

「そうナスね。人の噂も75日と言うナスからとりあえずどこかに隠れるのがいいナスね。しばらくしてシレッとまた戻ってくると言うような感じでいいと思うナス。」


 いやいやいや、俺この街についてまだ1日すら経ってねえぞ。というか転生してからまだ2日も経ってねえぞ。


「隠れるって言ったってなあ〜?どこにそんな場所が………………ある!」

「本当ナスか? 一体どこに?」

「俺からとっても近くにあったわ。」

「なんで『俺から』ナスか?『ココから』がいいと思うなすけど…………まさか!」

「はい、ナスビ。それじゃあちょっと失礼しますね。」


 俺はナスビのヘタを取り、出てきたブラックホールのような空間に自身の頭をめり込ませて、はいる。いやー、ナスビのマジックボックス的な機能に感謝だぜ。ココだったらしばらくは隠れられるだろう。


「あ、終わったわ。……ギュハーーーー! 痛い痛い痛い痛いナス。タンマタンマタンマ!」


 ナスビがもはや語尾をも忘れてタンマと言い続ける。だけどそんな言葉が俺の心に届くわけがなかろう!

 こうして俺は、無事にナスビの中に入ることに成功した。ちなみに中は暑くもなく寒くもなく、非常に住むのに快適な空間だった。ちなみにナスビの中に入った今でも一応会話は可能である。


「はあ、ようやく入れたよ。お疲れさんナスビ。」

「淳さん。この恨み一億倍にして返してやるナス。」

「わかったわかった。その恨み言は後で聞くからさ。とりあえずしばらくこもっていることになるから、何も食べないと餓死とかで死んじゃうから近くの料理屋さんで何かテイクアウトしよう。」


 俺は大量にあったマイクロアントおよびマイクロアントクイーンのドロップ品と生命の源を全部売ったためお金は大体600000コインくらい所持していたのでお金に関しては正直困ることはなかった。まあ言うなれば暇というところだな。


「ナスビさ〜ん!」

「何ナスか?」

「とりあえず料理屋に着くまで筋トレするからあんまり揺らさないでね。」

「分かりナスた。まあアイテムボックスの中に入っているから揺れとか起きないはずだけど。」


 俺は暇を潰すために筋トレをすることにした。なんせアイテムボックスの中だ。無限に空間は続いているから永遠に走ることができる。まあ筋トレグッズはないのだが無しでもさまざまな運動ができるからヨシ!


〜数分後〜


「淳さん。料理屋さん着きましたよ。メニューから好きな食べ物選んじゃってくださいな。」

「ハアハアッハアッハア、待ちくたびれたよ。あー何にしようかな?」


 俺はアイテムボックスの空間から外の空間にあるメニューを見た。どれも美味しそうだ。しかも結構リーズナブル。さてさて、しばらくこもるわけだし大量に買い込んでおきたい。と来れば、


「1ページから4ページまでのの肉料理全部ととサラダ全種類。ドレッシングは無しで。」

「わ、分かりました!」


 受付さんが非常に面食らった顔をしている。まあそれもそうだろう。こんなに大量に買う人なんて稀だからな。いたとしても迷惑な人ばかりだ。というかそれ以前にこの受付さんから見たら初めて見る動物がどこにもいない何かと会話をしているのだ。


「はい、どうぞ、お暑いので気をつけてください。代金は15730コインになります。」

「ありがとうございます。ええっと、15730コイン……どうぞ!」

「え!?あ?ああどうも。ま、またのご来店をお待ちしております。」


 さて、会計も済ませたし早速食べるとするかな。と言ってもアイテムボックスの中で食べるのはなんとなく嫌だし一旦街から出て広ーい平原的な場所でで食べるとするか。

(※補足。会計さんが超ビビっていたのは一見愛くるしいみた目のナスのヘタがポロリと取れて、取れたところから超ムキムキの腕がコインを持って出てきたからだよ。)


「さて、ナスビ、しばらくこの街に来れないんだったら今のうちに、強敵が出てくるようなエリアに行ってパワーをたくさんゲットしよう。で、食料とか生活必需品がなくなったら一旦ナスビの中に入って街に入って買い物をする。」

「あー、いいんじゃないナスか。特に異論はないナス。」


 こうして俺の新しい生活スタイルが誕生した。

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