第4話 より尖っていく。

「ハイ! フン! トア! ウリャア!」

「もう転生した時と天と地ほど筋肉の差がついているナスね。」


 ほとんどのマイクロアントを殲滅した俺たちはついに女王蟻の部屋の前まで来ていた。(殲滅という名の食事。)

 ここで俺は今まで鍛えれられていなかった筋肉をポージングで鍛えている。ポージングとはサイドチェストとかのアレだ。

 アレは一見カッコ付けのような一面もあるにはあるがれっきとした筋トレである。

 全身の筋肉を膨張させ、肩に力を込める。姿勢は良く、…………ハイ!サイドチェスト!!


「ウシ、これで大体の準備は整った。 女王蟻挑むぞ、ナスビ。」

「ここまでかなりいいペースでナスね、順調ナス。」


 気分もOK。それでは、いざ行かん!


 覚悟を決めた俺は女王蟻の部屋に侵入した。すると、目の前にはブクブクと太った人間と同じくらいかそれ以上の大きさの毛羽だったマイクロアントクイーンがいた。正直きもい。


「さて、ここでパワーを一気に獲得しよう。おい、そこのデブ蟻!かかってこいやあぁ!!!」

「キシュエグルァアアアアアアアア!」


 マイクロアントクイーンは俺の言葉に反応して、前側の4本の足を上に上げ、威嚇の体制をした。全身の毛を逆立てているため、それなりに迫力はある。

 今更だけど、なーにがアントだよ、エグいくらいデケエじゃねえか。喰っちまうぞ。


「さて、まずは小手先、投擲メテオ!」


 俺は鍛えられた手を使って周りにある土をコネコネして圧縮させ、ソフトボール程度の土団子を作り、プロ野球選手をも圧倒的に凌駕する速度でマイクロアントクイーンにぶん投げた。

 メテオを盛大に顔面に食らったマイクロアントクイーンは痛いのか知らないが転がって足をワキワキさせた、ちなみに顔面はポコッと凹んでいる。顔面が陥没しても余裕で生きるとは、流石、虫の生命力だな。だけど多少のダメージは負っている。


「ギュアギャルギュグオオオオオオオ!!」


 すると、怒り狂ったマイクロアントクイーンがこっちに向かってくる。


「じゃあ次はこれだな。 スウッ、正拳突きぃ!」


 俺は突進してくるマイクロアントクイーンの顔面の損傷部分に正拳突きをくらわした。

 するとマイクロアントクイーンの顔面の装甲部分にヒビが入りパラパラと崩れ落ちた、グロい。


「グルギェアギュルグキェキュルグアアアアアア!」


 自分の自慢の顔面の装甲がバッキバキに破壊されたのがよっぽど腹が立ったのか再び突進してきた。懲りないやつだ。


「じゃあ最後はアレとアレで締めるか。 …ハイ! ッサイドチェスト!!」


 俺は突進してくるマイクロアントクイーンをサイドチェストで受け止めた。 必死に踏ん張り、3メートルほど進むと減速して6メートル辺りで停止した。


「からの! 新技:虫喰らい!」


 俺はマイクロアントクイーンの顔面に顔を突っ込み、


 ムシャリ


 マイクロアントクイーンの顔面を喰った。更に食うことでできたスペースにまた顔面を突っ込みより深いところの肉を食う。 ふむふむ、コイツは女王ってのも相まっていいものでも食っているのか知らないけど結構旨味が強くて苦味が少ないな。まあまあうまい。

 俺はドンドンマイクロアントクイーンの内部を食い散らかす。ちなみに外側から見たら顔面が破壊されたマイクロアントクイーンがジッと静止している状態だ。そしてついに、


 ゴリッ ブチ!


 いつの間にか俺は頭部から胸部へと食い進めており生命の源を食いちぎっていた。マイクロアントクイーンは消え去り、結果的にはマイクロアントクイーンの装甲と生命の源が落ちていた。ちなみにナスは部屋の端っこで何か恐ろしいものを見ているかのようにぷるぷると震えていた。一体何に対して震えているんだか。

 

 その時!


ピピピピロン!


 パワーが増えたことをお知らせする軽快な音楽がなった。しかも四つ連続で重なってだ。さてさてどんなのがきたかな?




 〈パワー一覧〉

・テンプルマン

・new‼︎ 砲台人間(その手から繰り出される投擲は音速を超え、目にも止まらぬ速さで敵を穿つ。これ受け止められるのは僅かな人のみ。)

・new‼︎ コブシマン。(その鍛えられし腕から打ち出される硬き拳は岩をも砕き木を粉砕する。彼の拳に無傷で耐えられるのはもう人ではない。)

・new‼︎ ハイ! ポーズ!マン(その鍛えられし大胸筋、腹直筋、腹筋はいかなる物理攻撃を無効にし、弓を弾き返す。この肉体に切り傷を入れられる刀は余程の名刀であろう。)

・new‼︎ ドリルマン(このパワーを持つものに体に入られたら最後、身体中に穴を開けられ命を削られるであろう。ドリルだけに。)




 うーん 相変わらずのネーミングセンスと共に無理矢理な名前のパワーといつもはカッコイイ説明に寒いダジャレが存在したぞ。

この時、武道淳は知らなかった、ここで順風満帆だった異世界生活に絶望が起きる事を(+ちょっとの強化)。


パリロリラリラン!



 俺は聞きなれないリズムを耳にする。種類多くね?とりあえずナスに聞くか。


「なあナス。またまた見慣れないリズムが聞こえたんだけど何なん?」

「ナス? あ〜〜それはアップデートですナス。 新しく新要素が追加されたり自身に強化や弱体化が施されるナス。」


 あーーアップデートが存在するのか。というか弱体化が存在するって?一体どんなことが起こったんだ? 嫌な予感が走るけど。

 俺は思わずアップデートの内容と考えてしまった。 いつものごとく目の前にはディスプレイみたいなのが出てきた。 内容は………………ハアッ⁉︎



〈あなた自身へのアップデート内容〉

・弱体化:剣、斧、槍、盾、弓、クロスボウ、火器、鎧、攻撃用魔法。以上の物が使用不可能になります。


・スキル『肉体』の強化:①筋肉のつく倍率を10000倍から10000000000000000倍に変更されました。 ②食べるものの栄養分を1000000000000倍に増幅できます。


・人族から超人属へ変わりました。



 オイオイ!世界の管理者さんや、俺、武器の使用禁止と人間をやめてまで筋肉をつけたいと思ったわけやないで?



 この日、俺は人間をやめた。


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