Handmade Guns 東京

ジェッコン

第1話 前略お母さん

前略お母さん…私はそっちに帰れそうにないです、何故なら私はここで死んでしまうかもしれないからです。

東京の暗く人が通らないであろう裏路地に拳で鉄を殴る音が聞こえる。

スーツ姿の女性が怪物に盾越しに殴られているからである、彼女の盾を握るその手はその拳の衝撃で掌は既に血で汚れていた、腕は悲鳴をあげ今にも折れそうである、1つ目の怪物の剛腕は、躊躇、手加減という言葉を知らなかった、ただひたすらに己が言い渡されし命令に従い続けるという忠誠だけであった。

(お母さん、お父さん、)

彼女の頬には自然、いえ、当然の生存本能、生きたいという己の意思に涙する。

涙はアスファルトに吸われ消えゆく、その時、轟く銃声がその鈍い殴り続けるを止めた、裏路地はその不気味な姿に合った静寂を取り戻す。

彼女は顔を上げる、視線の先には赤き月とその月光の本に立つ、彼女のヒーローの姿があった。

「時は遡り 東京都 渋谷」

(これは私の門出待ちに待った都会暮らし)

私の名前は、光崎 蒼菜、今日から東京都で過ごす、田舎から上京してきた1人の新社会人です!会社は商品の営業、私もこの仕事で晴れて都会人!そんな気分で胸を踊らせています!「アレ」を拾うまでは。

時は進み夜、小さな二階建てのアパート、彼女は初日から疲労によりぐったりとベッドに横たわっていた、理由は単純である、初日から女性のマウント争いに揉まれたのである、田舎からの上京、特にこれといった勝ち筋もない、彼女にはその山の下層のマウントの取り合いにいつも勝てない女性達にはいいエサなのである。

仕事を頼まれ、お茶を注ぎイチャモンをつけられ、だが彼女は私の為なのだろうと善意でひたすら受け続けた、後から自分は嫌がらせ、パシリそんなのを受けていると気づいた、それは、もう遅すぎた十分すぎる程、もうイメージが着いてしまったのである。

「私って…なんて弱いのかな、こんなに揉まれて…初っ端からズッコケて私は…はぁ最初からなんか長年務めてきた歴戦の社会人みたいになってるし…」

謎な事を言っているが相当に疲れた彼女はベッドから足の勢いで飛び起きる、引っ越したばかりのダンボールばかりの部屋を歩く、彼女はコンビニに向かい、美味しいもののひとつくらいとその疲れきったヨロヨロと弱々しい足取りでその小さな部屋を出る、階段を下り、街灯が所々道を照らす、その暗い道をゆっくりゆっくりと歩く重い重い、何かに取り憑かれた様に歩く、何かいい事はないだろうかと思いゆっくりと、上を向く、地元で見えていた満天の星空はもちろんなく、あるのは点々と弱々しく光る星、まるで今の彼女の心を映し出したような暗い空だった、またゆっくりと足元を見ようとするとカチンという軽い音が彼女の足元で鳴る

「蹄鉄でも…踏んだかな?」

抜けない田舎の感覚を冗談混じりで自分を元気付けようと、呟き、そっと足元を見るそこには鉄の小さな箱があった。

彼女は気になり屈み、つかみあげてみる。

鉄の箱には綺麗な装飾がされており、芸術品か何かではないかと彼女は目を丸くし物珍しく眺める。

「綺麗…色んな所に枝みたいのが書いてたり…月みたいのも書いてある、…綺麗…でも」

彼女は箱をゆっくりと転がす鉄の箱はコロコロと転がる彼女は、忘れた人に悪いなという少々の申し訳なさといい物を見たと少し明るくなった気持ちでコンビニへ足を運ぶ。

その内箱はコロコロと彼女の後ろで転がりパタンとその場に留まる、そこには美しい月の印が、その印は本物の月に照らされ赤く黒く不気味に輝いていた…まるで彼女の道をその悪しき月の光で導かんと言わんばかりに

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