4◆複合魔法◆
1年が過ぎて俺は6歳になった。結論から言うと、俺はめっちゃ魔法を使えた。それも普通ではないレベルで。5歳で判定を受けて以降、俺なりに魔法を調べたり、試したり、人に聴いたりしたことをまとめると以下のようになる。
魔法には火、水、土、風、昼、夜、癒しの7つの属性があり、俺が赤ん坊の頃に触り続けた体の中の6つのビー玉は、癒し以外の6つの属性に対応していた。魔法判定の際に、ビー玉の中心を通ったのは、魔法の力の源、魔力だ。ビー玉は、その魔力が通ってからは、姿というかイメージが変化した。1番わかりやすいイメージで説明するなら水道の蛇口だ。
おそらく生まれた時には、誰でも6つの蛇口…の可能性みたいなものを持っており育つにつれて、それを全て失うか、どれか1つ、まれに2つ以上が残る。ちなみに癒しの属性はビー玉とは別系統らしい。
魔法の才能を多少でも持つ人が、他の人の額に触れて集中すると、相手が同じ属性を持つ場合は、感覚的にわかる。これが教会で行われた魔法の適性を調べる儀式だ。判定の儀式ではビー玉の大きさを『少し』『ある』『たくさん』という3つに分けるが、判定する人によって、当然のようにぶれがあると聞いたときは笑ってしまった。
この儀式によって、刺激を受けたビー玉は、持ち主の魔力の道を開通し、蛇口へと変化し魔法が使えるようになる。蛇口が『たくさん』になるほど、威力の高い魔法を使えるが、蛇口が大きくなればなるほど、それを捻ること、魔法の発動には時間がかかってしまう。
ちなみにゲームによくあるMP、マジックポイントという概念はなかった。魔法はどれだけでも使える。ただ、蛇口を捻る長さや量に応じて気力と体力を削られていき、使い続ければ気絶する。
複数の属性に適性がある人間は、蛇口を捻ろうとしても、どれを捻ればいいのか分からない混線状態になるらしく、結果魔法は使えないとされている。
◇
「ホットウィンド」
俺は指先から、温かい風の渦を作り出す。要はドライヤーだ。火と風の魔法を合体させた複合魔法だ。濡れた時に素早く乾かせるし、指先以外から出せば寒い日に体を温めることができる。
「マッドシールド」
ゆるゆると対流する泥の盾を腕にまとう。水と土の複合魔法で、盾の上にまとわせれば、敵の攻撃をやわらげる上に、敵の武器に着いた泥は硬化するので、相手の動き自体を重くする効果がある…予定だ。まだ使用したことはない。
「スタンライト」
夜魔法で自分の目を闇で覆うのと同時に、自分の前に、光の玉を作り相手の目をくらます魔法だ。目のある生物には効くと予想している。これもまだ実戦で試したことはない。
ビー玉を磨き続けたことは大正解だった。そのまま放置していたら消えていったであろう6つの属性を残すことができ、判定の儀式で使えるようになった。ずっと触り続けていたから、蛇口を捻る早さが異様に早く、即座に魔法を出すことができる。そして、これが1番大きいのだが、俺の蛇口はホースのように柔らかく動かすことでき、そして2つの蛇口を同時に捻ることができる。
…結果、俺は複合魔法が使えた。
蛇口のサイズ自体は小さいので、出力の大きなものは使えない。火属性なら、指先に火がともる程度と言われていたが、俺は『少し』の中でも上の方だったらしく、ピンポン玉サイズの火の玉はなんとか飛ばせることはできた。たいした攻撃力ではない。それが逆に俺をやる気にさせた。後述するが俺の前世から考えても、この仕様が俺にあっていた。
俺はとにかく複合魔法を練習しまくった。家族の前で練習はできないと思い、深夜、皆が寝静まってから庭に出て練習をした。音が出たりする魔法は避けねばならなかったため、思いついたことを全部試しはできなかったが、ひたすらのめり込んた。とにかく毎日が発見で、練習するたびに徐々にできあがっていく魔法の全てが楽しかった。
真夜中に練習するものだから、日中は寝るか、頭の中で新しい魔法を考えて、イメージトレーニングをひたすらしていた。そのうち、発動の際に工夫をすれば、『少し』の俺でも、魔法の威力をちょっとだけ高めることができることに気づき、さらに没頭した。
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