第3話

はぐれものハーレム、爆誕 ⑴

 重たい瞼を開くと、騒音が酷くなった。悲鳴のような、歓声のような……人々が言い争う声のようにも聞こえる。

 辺りは光に包まれていて、何も見えない。

 最初に目に入ってきたのは―――鼻息を荒くして、見開いた目をぎょろつかせた、巨大なドラゴンだった。


「ひっ―――」


 思わず悲鳴を漏らす。逃げようにも、体は重く動かない。

 とはいっても、周囲を多くの人間が取り囲んでいるので、きっと逃げられないだろう。

 視界と共に、聴覚も明瞭になってくる。前に見た時の夢とは違って、今度ははっきりと言葉を聞き取ることができた。


「―――あぁ……ああ……!! これほどに永かった十年は生まれて初めてだ……!!」


「主よ……遂に、貴方の願いが果たされる時が来ました」


 突如、体を浮遊感が襲う。凄まじいスピードで地面から離れていく。

 何かに掴み上げられたらしい。それがドラゴンかどうかまでは分からなかった。次の瞬間、体が強烈な勢いで何かに叩きつけられたからだ。


 それから、ひときわ大きな泣き声がしてきた。

 声の主は泣きじゃくっていて、うまく聞き取れなかった。


「おか………さ…、……!!」




 光が遠のき、視界が再び黒くぼやけていく。

 苦しい。全身が痺れている。


「ウ………」


 再び瞼を開ける。今度は、現実世界で。いや、異世界だけど。

 重量を感じながらなんとか上体を起こすと、オーグレディの腕が首を、メドワーナの頭が腹に乗っかる形で、オレを圧迫していることが分かった。


 痺れて感覚が無くなった腕で、彼女たちを退ける。

 森の新鮮な朝の空気を思いきり吸い込んで、オレは一言、呟いた。


「……ティタじゃなくて良かった…」



   ◇ ◇ ◇

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る