第6話

 突然、店の3番個室のドアが蹴破られる。AIの集団が入ってきて、抵抗するまもなく、アキを連れ出した。押さえつけられて身動きができない状態で、アキが連れ去られてしまった。慌てて外に出ると、そこには入店する前とは打って変わって、地獄のような世界が広がっていた。入店前は平和だったAIセンター前は、守備AIと過激派暴徒の激しい争いが繰り広げられていた。暴徒とは違う民間人に駆け寄り、

「いったい何が起こってるんだ⁉」

 そう聞くと、へたり込んでいた青年はおびえた表情で言った。

「暴徒が来て守備AI、警備隊と言い争いになってたんだよ。そこまではまだなんもなかったんだ。でも……」

 彼は、ガクガク震えながら言葉を詰まらせる。どうにか落ち着くのを待って、彼の話を聞いた。

「でも、突然白色AI、多分警察局のAIなんだけど、そいつらが現れて連れてたAIロボを攫って行ったんだよ!」

 さっき個室に入ってきたのも、白色のロボットだった。そのロボットが連れていたAIを警備隊の後ろを通って連れ去ったことにより、暴徒に連れ去られたAIの被害者が加わり、殴り合いが始まった。4万弱だった暴徒は徐々に周りの人間を集め、始め5万に差し迫っていた。対する警備ロボ、AI守備隊、合計2万が戦闘を繰り広げている。

  守備隊は優秀な火器を所持しているが、民間人にも所持の許可されている火器を持つ者や、店から強奪してきたもの、猟銃などありとあらゆるもので、もはや紛争の規模になっている。しかしなぜかそこに、警察の姿はない。既に30分は経とうとしているのに、一向にくる気配がない。サイレンの音も、警察官が首から下げている笛の音も聞こえないのだ。これは警察局のAIが、他のAIを攫ったのが関係していると思い、青年を安全なところまで避難させながら、裏路地を縫うように走り、警察局本局へ向かった。


 角を曲がって警察局の前に着く。そこには異様な光景が広がっていた。警察局のAIと恐らく攫われてきたAIや自立型ロボット、生身の警察官が殴り合いをしていた。近くには破損して立ち上がれなくなった大破した民間ロボットがいる。普段街中で観光客を案内するのが主な仕事のロボットだ。

「今何が起きているんだ⁉ 君は巻き込まれたのか?」

 ロボットは片言で途切れ途切れに話し始めた。

「はイ……巻キ込まれました……捕まった民かンAIが脱走してこのコウソウに発展しました」

 目の前では相変わらず殴り合いが発生している。発生している最前線は最早顔や体のパーツが取れてボロボロになったAIと自立ロボと制服の破けた警官が未だに荒々しく、激しい戦闘を繰り返している。AKIももしやこの中に……そう思うと居てもたってもいられなくなった。気が付けば、

「AKI! AKI!」

 そう叫びながら抗争の中を分け入っていった。

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