第5話

 アキと亜希ご両親の対談後、彼女とはよく外出をするようになった。AIロボを連れ歩くのは、近年ではそんなに珍しくない。もっとも、人工皮膚などの進化によりどれがAIかなどほぼ区別がつかないほどだからだ。アキも例外ではなく、服さえ着せてしまえば関節部分などは隠れるため、人間と遜色がないように見える。

「いらっしゃいませ」

 腕時計型の電話を、ウェルカムロボの手にした受付端末にかざす。ピロリンと軽快な音を鳴らし、予約者名が端末に表示される。

「2名様、個室へのご案内です。3番へお進みください」

 この店はAI連れ込みOKの店なので、アキを連れていても何のためらいもなく入店できる。料理人と店長以外はロボットなので、注文を取りに来たのもウェイターロボだ。近年はこういったロボットや、AIを利用し、徹底的なコストカットをしている。もちろんそこからあふれてしまった失業者が多数居たものの、新たな職業を作ることによって強引に解決した。しかし、今もプログラム関係や鉄道関係の失業者は、いまだ絶えない。その集団こそ、昨日のスーパーの横にいた集団である。

「AIオイルと和牛のステーキを」

「かしこまりました。AIオイル、和牛ステーキ。送信します」

 そう言って、ウェイターロボは個室を出ていった。次に来るのは、料理を運んでくる時だ。

「どう?初めての外食は」

「初めてですが初めてではない気持ちです。亜希さんの記憶はありますから…」

 聞いて少し悲しくなるし、思うところがある。亜希が生きていたら、そんな気持ちになってしまう。でもアキは彼女で、僕に寄り添っていてくれている。それを、ないがしろにするわけにはいかない。昨今のニュースの会話などをしていると、

「お待たせいたしました。和牛ステーキとAIオイルデス」

ジュ―といい音を立てて、ステーキのいい香りがする。

 少し発音がおかしかったものの特におかしな動作はなく商品を置いていく。アキはオイルを飲み、僕は厚く切られた和牛のレアステーキを口に運ぶ。二人は、楽しいひと時を過ごしていた。いつものように、世間話、特に昨今のAI賛成派と反対派の話に発展していった。

  時を同じくしてAI反対派の中の過激派”撲滅隊”が暴動を起こしていた。これに呼応して、ある失業したプログラマー集団が、警察庁や各省庁に大規模なハッキングを仕掛けていた。彼らが仕掛けたのは子供がおもちゃを転がすようなものではない、まるで大人買いをするような規模の大規模ハッキングだ。二人はいかにして乗り切るのであろうか、そして世界情勢はどうなってしまうのか。暴動には、過激派だけでなく思想をそれとなく理解した市民含め約4万が国会の開かれている、AIセンターへ向かって行軍をしていた。手には瓦礫や、木の角材などが持たれていた。それよりも危険なものも……

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