第3話

 アキが車にの助手席に、ゆっくりと乗り込む。前日の深夜に、車の乗り方のラーニングをプログラムしておいたので、乗車はスムーズだった。横目で確認すると、セミロングの髪の毛の端っこを、くるくると巻いている。小さいころ、亜希がしていたしぐさをそのまま模倣していた。

(ほんとに亜希が居るみたいだ)

 そう思いながら車のカーナビに、目的地を入力する。目指す場所はただ一つ、亜希の実家だ。

 彼女の家族とは親子ともに仲が良く、将来は…なんて話も出ていた。そこで起こったのが溝端町交通事故、車のAIが熱暴走を起こし、信号を無視して交差点を渡る小学生の集団を撥ねたのだ。

 搭乗者の男性一人と、児童9名のなくなる大事故、その中の一人が亜希だった。それを知ったのは亜希が死んでから1か月後、学校が全校集会で発表した時だった。両親はその周回まで、隠していたのだ。撥ねられた中の一人であった自分は、足の骨折と意識不明1か月という撥ねられた中でも比較的、軽傷で済んでいた。しかし、それよりも亜希が死んだという事実が悔しかった。

 最終的に搭乗者は亡くなっているし、運転AIも壊れてしまったため、自動車会社へ遺族と被害者が裁判を起こすことになった。判決としては、AIの脆弱性を問題視し、改善と遺族への慰謝料を支払う。という形で、判決が出て決着がつき、その後ニュースで報道され、AI企業界に大きな影響を与えた。

  (このころはまだAIの法案がしっかり整備されていなかったため、AIの製造会社は訴えることができなかったと大人になってから聞いている)

 今でも亜希が死んだことや、横にいるアキが彼女に見えることにジワリと来るものがある。

「まもなく、目的地です。駐車ポイントを設定してください。お疲れ様でした」

 運転AIの指示に従い亜希の実家を選択する。来客用に空けてあるスペースに駐車し、

「ちょっと待ってて」

 言いながら下車し、アキを待機させる。亜希の生家であり、彼女の両親が住んでいるの前に立ち、インターホンを押すと、ピンポーンという音と共に家の画面が映しだされる。お互いに顔が確認できるタイプの、最新型インターホンだ。以前来たときは、向こう側からしか見れなかった。

「はーい。あら久しぶり! 今日はどうしたの?」

「お義母さんお久しぶりです。今日はうちのAIを連れてきたんです。よかったら紹介させていただけませんか? 」

 すると、お義母さんは笑顔で声がワントーン高くなりながら言う。

「あらまぁ! この前言ってたアキちゃんね! いいわよ! 上がって上がって!」

 画面が切断されると同時に、家のドアがガチャ、っといって開錠される。アキを車から呼んで来て、二人並んで家の中へ入っていった。

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