第20話 親戚とのご対面
「久しぶりです!ルメリア!」
出てきた男性は見た目から察するに多分父様の兄弟、私の伯父にあたる人だろう。
ダークブルーの髪と深緑の瞳が落ち着いた雰囲気を醸し出している・・・けど目を輝かせながら満面の笑みで父様に話しかけているあたり意外と落ち着きが無さそうだ。
「ええ、久しぶりですね。公爵様。」
「ルメリア、そんな公爵様なんて寂しい呼び方しないで下さい!」
父様達は楽しそうに談笑し始め私は完全に蚊帳の外になってしまった。久しぶりであろう兄弟の再会の最中に水を差すことはしたくない、けれど何もせずに立ち尽くすのは正直かなり辛い。
どうしようかと周りを見回してみると父様の兄弟と共に出てきた美少年としっかり目が合ってしまった。
「初めまして。僕はエルリカ・アグレシアと申します。貴方は?」
「あっ、えっと、アリステアと言います!」
いきなり話しかけられ戸惑ったせいか、考えていたよりも大きな声を出してしまった。
いや多分一番の原因は美しすぎる微笑みのせいだろう。実際、並んでいるメイドさん達もチラリと見ては顔を真っ赤にして悶えている人が何人も居る。見た目的にライ兄と同じ位の年齢だろうに末恐ろしい。
そして気がつくと父様達の話題が私に変わっていた。
「ところで・・・ずっと気になってたんだけど、その子って誰?」
「あぁ、この子はアリステア・ブロント。私の娘です。」
「は、え・・・?」
目を見開き信じられないものでも見たかのような反応をする伯父様は私を見たり父様を見たりと忙しそうに視線を動かしている。それにしても、もしかして私・・・
「あの、私って伯父様と会った事なかったんですか?」
「確かにアリスは兄上に会うのは初めてだったかな、」
忘れてた!みたいなノリで軽く言う父様は本当色々と大物だと思う。
それにしても娘が出来たことなど最低限兄弟に伝えたりしない物なのだろうか?
だけど伯父様の反応から見ると一切伝えてなかった様だし・・・
「・・・うん。分かったよ、わかった。ルメリアは昔からそんな感じだもんな、うん。」
なんだろう・・・、父様の突然のカミングアウトを必死に納得しようとしている伯父様が物凄く不憫に感じてしまう。
「で、後ろの男の子は?まさか息子ですとか言わないよね?」
「私はそんなに信用ないかな?アリスの従者の子だよ。」
「ルカ・リリアルと申します。公爵様にお会いできる事とても光栄に存じます。」
父様・・・今の今、いきなり娘が居るなんて爆弾発言しておいて信用どうたら言ったらダメな気がする。
伯父様だって分かりやすく苦笑いしてしまっているのに父様は気付いていないのだろうか。
「まぁ、ルメリアと・・・アリステアちゃん?とりあえず入って」
伯父様がため息混じりにそう言い扉を開けると・・・見えたのは上品な芸術品や家具の並んだホールの様な所だった。勝手な偏見で貴族=黄金キラキラにクマの毛皮がドーン!!みたいなイメージだったけどこの部屋は全然違い、豪華展覧って訳ではないけれど決して寂しい感じではなく、上品さを感じる家具や絵画がバランスよく並んでいる。
「ルメリアは二階の右から2番目の客間を使って・・・アリステアちゃんはその左隣の部屋・・・って言ってもわからないか、着いてきて。」
「はい!」
そう話すとホールの中央にある長い階段を上っていく。階段は一段一段が高く、今のアリステアの低めの身長だと結構疲れてきてしまう。もう少し筋肉とか体力をつけた方がいいかもしれないそんな事を考えながらまた一段上がろうとした時、足を踏み外した感覚がした。咄嗟にぎゅっと強く目を瞑る・・・も予想していた衝撃はこなかった。
「大丈夫?」
「・・・へ?」
透明感のある透けるような声が近くで聞こえ、そおっと目を開くとそこには美しすぎる、先ほどの美少年の顔がドアップで見えた。サラサラの黄金色の髪にパライバトルマリンのような水色の瞳、透き通るような白い肌・・・神秘的で神々しさすら感じられるそんなお顔をドアップで見たせいで意識が飛びそ・・・
「え、ブロント嬢?!」
「あっ、大丈夫です!ありがとうございます!大丈夫です!」
本当に意識が飛びそうになっていた。というか飛んでいた。
少し深呼吸して今の状況を冷静に判断すると、私がバランスを崩す→エルリカ様が私を支えるみたいな感じだったのだろう。ということは今も支えてもらっているということで・・・
・・・想像してはいけない。想像したら即フェードアウトしてしまう。
とにかくお礼を言って早く離れてもらおう。えっと、漫画とか小説ではどんなふうにお礼とか言っていたっけ?
「アグレシア様、助けてくださり大変有難うございます。もう立てますので・・・」
「ああ、それならよかった。怪我がないようで安心しました。」
キラキラと光が見える様な微笑みでそう言うエルリカ様は、優しいのは分かるけれどその笑みで私はダメージを受けていると考えると複雑なものがある。そして私は美しすぎるその笑みでダメージを受けながら永遠と続くように感じていた階段をなんとか上り切ったのだった。
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