第19話 ドキドキ王都旅行!!②
ガタゴトと馬車に揺られる事およそ20分。首都はまだまだ先にも関わらず私は思い切り馬車酔いをしていた。
「ゔぅ・・・」
蹲りながらホラー映画に出てくるゾンビの如く呻き声を上げる。
私が密かに憧れていた人生初馬車に対する感動は馬車の揺れによって消えていた。
父様曰くこれでもだいぶ振動は少ない最上級の馬車らしい。
少しだけ前世の揺れの少ないバスや車なんかが恋しくなる。
それにしても、よく見るファンタジー系の小説での貴族のお嬢様は、馬車に乗っても大抵涼しい顔をしながら優雅に外の景色を楽しんでいた。私の知る限りではこんな風に呻き声を出しているお嬢様は見たことがない。
あの優雅なお嬢様方は何か特殊な訓練でも受けているのだろうか。
「お嬢様大丈夫ですか?」
「ゔん、大丈夫・・・大丈夫・・・」
差し出されたハンカチ受け取りながら向かいに座っているルカを見上げてみる。
その座っている姿は凛としていて見るからに酔ってなど居ない。
貴族の御令嬢(一応)の私よりも貴族らしい雰囲気がある。本当にこんな私が貴族で良いのかと思うほどの格差だ。
するといきなり馬車が大きく揺れた。
「・・・・・・ゔっ、もう寝ます・・・」
「分かった。アリスゆっくりお休み。」
私は隣に座る父様に寄り掛かりその温もりを感じながら眠りについた。
◇◆◇
「・・・アリス、そろそろ着くから起きなさい。」
そう声をかけられ目を開けるとそこは最後に見た長閑なブロント領ではなく、沢山の人々とカラフルな建物が並び立つ大きい街だった。
「わぁ・・・!」
沢山の商人や出店、市場の様なものだろうか。人々が集まって賑わいを見せている。
一見お祭りに見えるけれど、今日はお祭りでも何でもない普通の日らしい。流石王都と少し感動してしまった。
「とっても凄いです!あっ!あそこでは曲芸をしてるみたいですよ!ねぇルカも見てみて・・・」
私はこう言った市場などには前世を合わせても初めて来るためとても興奮する。
気がつくと、その溢れた興奮が口から言葉として出てきてしまう。
「・・・ルカ?」
だけれど途中ルカに話しかけるもルカは答えず、不思議に思いルカを見るとルカはじっと、何か物思いに耽った様な顔をして何かを見つめていた。何を見ているのだろうと私もルカが見ている一点を見てみる。
するとそこには細い、裏路地に繋がるであろう道があった。
あまり治安が良さそうに思えないそこには数人の子供達がボロボロの衣類を見に纏い座り込んでいる。
華やかな街並みに紛れるそこは前世で言うスラムを思い浮かばせた。
「・・・あ、お嬢様どうしました?」
するとようやく私が話しかけた事に気付いたのかルカがパッとこちらを向いた。
さっきの表情とは違い、いつもと変わらない笑みを浮かべる。
「えっと、本当に首都って凄いね!」
彼の表情の意味はまだ私が触れてはいけない気がして私は今は忘れる事にした。
◇◆◇
「はい、アリス。お手をどうぞ。」
「ありがとうございます!お父様!」
父様の手を借り馬車から降りると沢山の使用人らしき人々が綺麗に整列している、ブロント領の屋敷の3倍はあるであろうお屋敷が鎮座していた。ベースは白で所々に緑がアクセントとして入っていて一見シンプルだが、入り口にある庭園が豪華でそれをうまく活かしている、とても素敵な屋敷だ。思わず見惚れてしまう。
「この屋敷とても綺麗だよね。私もかなり好きだったなぁ・・・」
「え、昔来たことがあるんですか?」
「あぁ。ここ私の実家だからね。」
「えっ!」
父様と入り口の扉まで歩きながら話す。
ここが父様の実家だったとは驚きだ。ここに来る時「宿泊場所ならいいところがあるから」としか言われておらず、宿にでも泊まるのかなとか思っていたが父様の実家に泊まるなんて聞いていない。
父様の実家と言うことはアリス・・・私の祖母や祖父が暮らしていると言うことで・・・
兄様や父様は今の私を受け入れてくれているようだけど祖父達が受け入れてくれるとも限らない。
もし前のアリスの記憶が完全に無い、今の私を拒絶されてしまったら。悪い未来ばかりが次々と思い浮かぶ。マイナスな事を考え過ぎない方がいい。そんな事分かっては居るけれどどうしても考えてしまう。
短い間だけれど確かに感じた家族の温かい温もり、それが離れていってしまいそうで私は父様の服の裾を強く掴んだ。
「どうしたんだい?アリス?」
「・・・いえ、なんでもないです!」
父様が私にそう問うも私は明るく返事をする。
父様に不信感を与えない様に・・・というよりかは自分自身の不安を振り払うような感覚だった。
そうこうしていると大きな扉が開いたかと思うと中から出てきたのは威厳のある初老の男性・・・ではなく
父様と同年代程の柔らかい雰囲気の男性とキラキラとしたエフェクトが見えそうな美少年だった・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます