第17話 溢れ出る興味
「あっ・・・えっと・・・」
どう答えればいいのか。答えが見つからず言い篭る。
どう言えばいいのだろう。『私実は前世の記憶があるんです~』なんて言えるはずもない。
冷たく降り続ける雨が沈黙の時間を果てしなく長く感じさせる。
私は俯いていて、ルカの顔なんて見えるはずもないのに酷く冷たい目で見られているように感じてしまう。
『自分達の知らない呪文で魔法を使う怪しい少女』それに近寄りたいと思うものは限りなく少ないだろう。
更に前世の記憶という得体の知れないものを持つなら尚更にだ。
・・・それを知られた時、知り合ったばかりのルカはもちろんライ兄に父様はアリステアが乗っ取られたと言って離れていくかもしれない。もしそれがバレたらやっと出来た親しい人達に、#また__・__#見捨てられるかもしれないと言う恐怖が頭を支配する。自然と体が震え、止めようとしても止まらない。その時、ルカは口を開いた。
「言いたくないなら別にそれでいいから。誰にだって隠し事や秘密の一つや二つ・・・いや沢山持っているんだし。」
優しく微笑みながらそう言うと自分も気づかないうちに流れていた涙をそっと拭ってくれた。その涙はバレてしまうという恐怖からか、安心からか、それともルカの顔が何処か切なげに見えたからなのか、分からなかったけど。
その時ルカは、気のせいかもしれないが私と誰かを重ねているように見えた。それもかなり大切な人と、私を。
「ところでお目当ての本とか見つかった?」
「そうだね・・・今日はこのくらいでいいかな。屋敷に帰ろっか。」
情報が多くてもう既に頭から溢れそうなくらいだ。今日のところはこれくらいにしておくのがいいだろう。
何か隠している変な人だと思われたかもしれない。だけどそれに触れず、さっきと変わらず接してくれるルカの優しさに、嬉しさと共に罪悪感が積もった。
◇◆◇
私達は無事屋敷に帰り、私は、自分の部屋でルカに濡れに濡れた髪と体を乾かしてもらっていた。
温かい風が体に当たる。表現するならドライアーぐらいの、ちょうどいい感じだ。
始め、私は自分で乾かすと言っていたがルカに却下されてしまった。
理由は「あの暴風を部屋で巻き起こされたら部屋が空き巣の入った後より酷くなる」かららしい。
だいぶ失礼な言い方に感じたが、正直、自分自身かなり不安だった為遠慮なくルカにお願いする事にした。
「るーかー?」
「何?」
「ルカは何でもう魔法を使えてるの?しかもこんなに上手く。」
そう私はずっと不思議に思っていた事を口にした。
想像力が強くないと使えない(らしい)魔法。私は想像しやすい単語だから使えたのだろうけど、ルカは偉大なる何とか何とか~みたいに長い呪文を使っていた。
あんなに想像しずらいものでこんなに上手く使えるなんて不思議で仕方がなかった。そして何よりコントロールの上手さ。私がこれをやろうとすれば火が風で燃え上がり、最悪屋敷全焼もあり得るだろう。
「使えるようにならざるを得なかった状況だったから・・・かな?僕からしてみれば君が使える方が不思議なんだけど。」
そんな事を言いながら上手く魔法をコントロールし、私を乾かす。
風が止まったかと思えば、気がつくと服はしっかり乾き、髪も元のふわさらに戻っていた。
「凄い・・・!ルカありがとう!次は私がルカを・・・と言いたいところだけどやめとくね。」
「うん。お願いだから絶対やめて。」
そう言うとルカはチャチャっと簡単に自分のことを乾かす。
乾かし終わったルカの髪はふわふわでかなり柔らかい。欲に負け思わず触ってしまったが気持ちいい。
わんこをもふっている時と同じ感じの癒される感覚がする。気持ちよさに知らず知らずの内に顔が緩んだ。
「わぁ・・・」
「何?」
私の顔が緩みすぎていたのか気がつくとルカは私の事をかなり引いた目で見ていた。
もふもふからの流れのせいで思わず脳内で威嚇する猫とルカを重ね合わせる・・・
はっとした私はそれより弁解せねばと慌てて口を開く。
「えっと、あの~・・・あっ!雨!雨って魔法でなんとか出来たりしないかなーって考えてて!」
酷すぎる言い訳に自分事ながら苦笑してしまいそうだ。
ルカもそう思ったのか半ば呆れたような顔をしていた。
「雨って事は天気系ってこと?なら魔法は違うよ。そう言う自然系のは精霊の領分。」
『精霊』またしても登場するファンタジー用語に私はテンションが一気に上がる。
精霊が現実に存在すると聞いた時、会ってみたい考えた私の願望は次のルカの言葉で一瞬で砕かれた。
「まぁ、精霊なんて相当心が純粋な人か、好かれる体質の人くらいしかみれないけどね。運が良かったら、一生に一度見れるか見れないかってところ。更に見えたとしても会話が出来るなんて精霊姫くらいしか存在しないんじゃない?」
「精霊姫って?」
『精霊姫』どんどん出てくるファンタジーに興味が絶えない。
しかもルカは質問に丁寧に答えてくれるし、知識が豊富だ。少し間違えたら歩くウェキペディアとして使ってしまいそうだ。
「精霊に特別愛され、その精霊達の頂点である精霊王に加護を貰った人のことを言って、聖女様と同等の権力と地位を持てる・・・と本には書いてあったと思う。」
精霊姫と聖女・・・聖女はファンタジーの定番とも言える存在だ。きっと相当地位が高いだろうから私が会える可能性は低いだろうけどいつか会えたら会ってみたい。色々考え、溢れて止まりそうのない私の興味は質問として夜遅く、私が寝落ちする迄続き、降り続いていた雨も私達が寝る頃にはようやく収まっていた・・・。
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