第15話 とある雨の日の一日

ルカが従者になって数日経ち、やっと平穏な日常が帰ってきた。

季節も少しながら変わり、今は春と夏の間、月で言うなら六月中旬くらいだ。


こっちにも梅雨はあるようでブロント子爵領でも連日雨が続いている。

その連日の雨によってブロント子爵領で災害があちこちで起こっているらしく、

父様やライ兄も忙しく走り回っているらしいけれど、私は前世持ちとは言えど前世の知識で解決!

なんて出来るような知識は持っていない為大人しく邸の中で過ごしている。


それにしてもライ兄、まだ14歳だと聞いていたのにもう領地経営に関わっているなんて驚いてしまった。

ライ兄は思っていた以上に優秀な人なのかもしれない。


そんな事を考えながら窓から、雨が降り続く外を見つめる。

ゲームやネットのないこの世界は意外とやる事がなく、私は連日の雨で外にも出れず暇をもて余しているのだ。



「はぁぁぁぁ・・・」



最近じめじめとした空気やどんよりとした暗い天気ばかりで少し暗い気持ちになる。

領での災害だって、前世の私よりも年下であるライ兄は働いているのに私は何も出来ずにいる。

そんな自分が情けなく感じて、更に落ち込んでしまう。



「お嬢様、溜め息ばかりつかれるのは良くありませんよ。更に暗い気分になってしまいます。」



真面目な従者になりきっているルカがそう呆れたように言う。

口調は丁寧だが、元の毒舌の方を知っている私からすれば違和感しかない。

そう思った私は、素の口調で話して貰えるように言うことにした。



「あの、ルカ?」

「どうしました?」

「えっと、今ルカは敬語を使ってるけど、従者って言うことはこれから長いこと一緒に居ることになるわけでしょ?だからその・・・ちょっと他人行儀で寂しいから、敬語を外して話して欲しいな~と・・・」



ルカは何故か固まっていて、もしかしたら命令みたいに聞こえたかもしれないと思った私は、あくまで提案だから必ずしろと言うわけではないということも慌てて付け足した。


するとルカはいきなり吹き出し、笑い始めてしまった。

何が笑いのツボにハマったのか分からないが面白そうに笑うルカを見ていると和やかな気持ちになった。



「あー、本当に君貴族?話せば話す程貴族とは思えなくなるんだけど。」

「多分、貴族なはずだけど・・・」

「多分って、普通の御令嬢なら『私の血筋を貴方如き平民が疑うなんて無礼よ!クビよ!』ぐらい言ってもおかしくないような事君に言ってたんだけど・・・まぁとりあえず子爵様や君のお兄様の前、公の場以外はこの口調にしとく。」



公の場は分かるけど父様やライ兄の前でも変えるのは不思議だ。

だけど多分私には分からない理由があるのだろう。

それよりも少しだけルカとの距離が縮まった気がして私は少しだけ心が晴れたのを感じた。


私はこの暇な時間をどう活用しようか考えた結果、

子爵邸の敷地内にあると言う図書館の存在を思い出し、私の知らない事を調べる時間にする事を決めた。

知らない事を知れる上に暇も潰せると言う一石二鳥だ。

そう決めた私は図書館に行く事を決めた。



ザァァァァァ・・・


雨が降っている音が耳が痛くなるほど聞こえる。今私は図書館を目指して歩いている。


敷地内だしすぐ着くと思っていた図書館は・・・遠かった。

そう、私は忘れていたのだ。ここの敷地がとんでもなく広いと言う事を。


少しだと思っていた私はかなり軽装で来てしまって、今は大惨事になっている。

靴には水が入りびちゃびちゃして気持ち悪いし、ワンピースはびしょ濡れでふんわりとスカート部分が広がったデザインのものなのに思いっきりしぼんでしまっている。


ルカは従者として私について来ているが防雨対策バッチリの服装でとても涼しい顔をしている。



「・・・クシュンッ!」



濡れて冷えたのかくしゃみが出てしまった。呑気にもしかしたら明日風邪引くかもなぁなどと考えながら歩いていると不意にルカから呼び止められた。何だろうと思っているといきなりルカの着ていた上着を着せられる。

私はいきなりの事で頭が追いつかず変な声が出てしまった。



「へ?」

「それ着といて。」

「えっ、でもルカのだし・・・」

「いいから着といて。風邪引かれたら困る。」



そう言うとルカはすぐに歩き始める。

何が困るのか分からないがこれは彼なりの優しさなのだと認識しよう。

そう考え、私はルカの体温の残る暖かい上着に身を包みながら再び歩き始めた・・・。



◇◆◇



「・・・うわぁぁぁ!」


雨に打たれながらも何とか図書館へ辿りついた私はその本を多さに驚いた。

端から端まで本が詰まっていて天井ギリギリまでも本が詰まっている。ここまで沢山の本がある所なんて前世を含めても来た事が無い為、私は感激した。思わず声も出してしまうほどに。


ふとそばに居たルカの方を見てみると、消えていた。

もしや、幽霊とかお化けとかに拐われて・・・と言う私の不安は杞憂に終わった。

近くを探してみると普通に本を読んでいた。マイペース過ぎる。


とりあえず私も本を探そうと私は図書館の奥へと入って行った。

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