第14話 初めての従者
15分後、私が食堂に戻って来るとそこには・・・床に這いつくばる様な体勢で力尽きているルカ、それを座りながら足を組み見る父様、その隣で立ったまま冷たい目でルカを見つめるライ兄という謎の図が出来上がっていた。
何故ルカはそんな変な体勢で倒れているのか不思議に思うも、父様とライ兄から黒いオーラを感じる為、気にしない事にした。触らぬ神に祟りなしと言うやつである。
そして父様は私に気がついたのか私に向かってふわりと柔らかい雰囲気で微笑む。
「アリス、待たせてしまったね。ちょっとルカ君を虐め・・・いやお話を聞いててね。ほら座って。」
父様、ふわふわとした口調でしれっととんでもない事を言いますね?
父様の黒さを感じながら私は大人しく父様の隣の席へと移動しようとするが、途中力尽きているルカが目に入り足を止める。流石にこんな格好で倒れてるのは不憫過ぎる。
そう思った私はルカをお姫様抱っこすると近くの椅子を二つ並べた上に寝かせようとする。
抱っこ出来るか不安だったが思った以上にルカは軽く、楽にできた。
お婆ちゃんじゃないが本当にご飯を食べて居るのだろうかと疑問に思うほど軽い体で不安になってしまう。
「・・・ぅん?」
「起きた?おはよう。」
起きたのか腕の中で小さく声を上げたルカを見る。可愛い。可愛すぎる。
美少年は寝起きまで可愛いなど完璧ではないか。そして私は、勝手に彼と自分を比べて勝手に凹んだ。
再びルカを見ると何故かルカは手で顔を覆っていた。
「・・・女の子に姫抱っこされるとか夢夢夢夢・・・」
まるで自分に催眠術をかけるかのように『夢』を連呼するルカに私は現実を告げる。
「残念ながら現実です。」
「・・・降ります。」
仕方なく私がルカを下ろすとルカは安心した様に溜息をついた。
そんなに嫌だったのかと首を傾げるとルカは後ろを指差した。
「お嬢様、後ろ見てください。」
「え?ぁ・・・」
後ろを振り向くとにっこりと黒い笑みを浮かべた父様が立っていた。
私はルカのため息の原因が分かり、急いで頭を下げると小さめの声で言う。
「ごめん!ルカさん。私のせいで・・・」
「だから、貴族のご令嬢なら頭上げてください。相変わらずプライド低すぎです。本当に貴族ですか?」
私の身分が上な為敬語にはなっているが毒舌は変わらず、思わず笑えてきてしまう。
だけど、父様の黒い笑み・・・まさかまたルカが殺られるのではと少し不安になる。
すると私の不安は的中せず、父様は黒い笑みを一瞬で消した。
「アリス、お話しを始めてもいいかな?」
「あっ、はい!」
私が元気よく返すと優しく父様が微笑み、黒い笑みの緊張感とは反対の安心できる雰囲気に気が緩む。
「ではアリス。ルカ君はアリスが誘拐されたのを助けたと言っていたけど本当かい?」
「はい!確かに助けてくれました!」
有料で・・・と出かけた言葉をのむ。有料などと言ったらルカの印象が悪くなるかもしれない。
既に何故か悪く思われてるっぽいからこれ以上は阻止しようと心の中で誓う。
「ふむ、ルカ君が助けてくれたと・・・なら大切なアリスを助けてくれた恩人に何かお礼をしなければな。」
「いいえ、子爵様。助けを求めている女性が居たのなら助けるのが紳士というもの。どうぞお気になさらず・・・」
相変わらず猫かぶりが上手いルカは何も知らない人から見れば謙虚で紳士的な少年に見えるだろう。
だけれど私は知っている。ルカは腹黒な人だと。
私を助けるのだって3000万を見返りに求めて来るのだ。お礼は要らないなど本心な筈がない。
父様は少し考えると何か閃いたかのような顔をした。
「そうだ。ルカ君にはアリスの従者になって貰いたい!」
何故私の従者になる事がお礼になるのか理解できない私はルカの反応を見る・・・
とルカは瞳キラキラと輝かせていた。この世界では従者にする事がお礼になるらしい。よくわからん。
「完璧な衣食住保障に毎月の給金は40万でどうだろう?」
「・・・っはい!感謝します!」
力一杯礼をするルカに驚きつつも近くにいてなおそこそこ暇そうなライ兄に従者がお礼になるのは何故か聞いてみる事にした。
「ライ兄様」
「どうした?アリス。」
「従者になる事がお礼になるのってどうしてですか?」
「それはな、基本的に貴族の従者というのは給金がよく、ある程度の生活も保障される。更に言うなら貴族のお供をする訳だからいい縁にも恵まれやすいって訳だ。」
分かりやすく簡潔に話してくれたライ兄に感謝を述べると父様達の方へ視線を向ける。
すると何やら父様がルカに耳打ちするとルカは私の方へやって来て跪くと私の手を取った。
「アリステアお嬢様。この度従者にならせて頂きました、ルカ・リリアールと申します。僕は従者としてアリステアお嬢様に忠誠を誓います。」
そう言い終わると私の手に口付けを落とした。その瞬間私の脳内では大パニックが起こっていた。美少年からの口付けに対する興奮や、恥ずかしさ、意味のわからなさが入り混じり言葉では表せないような難しい気持ちだ。
そして少し経つとようやく冷静になれたのかこんな時マンガなんかではどう言っていた思い出した。
「ルカ・リリアール。貴方の忠誠しかと受けとりました。これからよろしくお願いします、ルカ。」
そしてなんだかんだあって初めて私の従者が出来たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます