第13話 貴族の面倒なお約束
ライ兄の言葉が最後に部屋は静まり返っていた。
ライ兄と父様の反応からしてルカが何かやらかしたのだと思うのだけど正直私からすれば何が問題なのか全く分からない。お辞儀はもっと深くとか?いやでもルカは充分深くしていたし・・・
考えれば考える程分からなくなりそうで私は一旦思考を放棄した。分からないものはわからない。
「大変申し訳ありません。ご令嬢の愛称を誤って呼んでしまい・・・」
ルカは深々とそれこそ床に付きそうな程の勢いで頭を下げる。
ていうかライ兄のお怒りの理由って愛称を呼んだだけ?
別にそこまで怒ることでは無いのではと思った私は真っ青になっているルカを安心させようと声を掛けることにした。
「えっと、ルカさん?頭を上げて下さい!私別に愛称で呼ばれる事嫌な訳じゃ無いので!」
大丈夫だという事を伝えようとルカに笑いかけると何故かルカは唖然としていて、
不思議に思いライ兄と父様の方を見ると二人もルカと同様に呆然としていて再び食堂に沈黙が流れる。
何故?と私があわあわしているとルカが今度は真っ赤になりながら口を開いた。
「・・・・・愛称って家族や恋人のみが呼べる名前で・・・」
小さい声でルカからそう説明されようやく意味のわかった私は自分がとんでもない事を言っていた事に気がついた。
ルカは当然私の家族では無い、だから愛称では呼んではいけないのに私を愛称で呼んでしまって、
それを私は愛称で呼ばれる事が嫌なわけでは無い・・・遠回しにOKして・・・
つ、つまりは私は彼の事が好きと言ってるのと同じで・・・
私はルカと同じく真っ赤になる。
「えっと・・・そう言う事を考えていた訳では無かったです・・・」
「あっ、はい・・・」
会話は続く事なくお互い真っ赤になりながらの沈黙が続く。
まさに穴があったら入りたいとはこう言う状況の事を言うのだろう。
ライ兄と父様がいた事を思い出しそっと様子を見るとライ兄はかなり気まずそうにして、父様は・・・先程とは比にならないほど燃え上がっていた。その様子を見た私は一気に私の中の熱が引いていくのを感じた。
私はとりあえず危ない状況なのをルカに伝えようとルカにコソッと声をかける。
「あの、ルカさん。」
「さんはなくて大丈夫です。」
「あっ、はい。えっとですね、お父様・・・子爵の様子を見てもらえます?」
私がそう言うとルカはチラッと父様の方を見るとその熱気・・・と言うか殺気に気がついたのか真っ青になる。
「・・・俺、いや僕殺されそうなんですけど、」
「確かに割と本気で危ないかも。」
コソコソと話す私達を見て父様は話は終わったと感じたのか私に優しく声をかける。
「アリス。ルカ君を少し貸してもらえるかい?15分後にここにまた来てくれ。」
黒いオーラが背後に見える父様は目で必死に私に助けを求めるルカににっこりと真っ黒な微笑みを向ける。
私はルカのSOSに対して指で×を作るとこれからルカにとっては悪夢の様な時が始まるであろうダイニングルームの扉を優しく閉じたのだった。
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