第9話 監禁されました。②

私は今現在、誘拐された先で土下座中だ。



「お願いします!どうかお助けを!!」

「無理無理!僕お貴族様敵に回したくないから!」



自分を誘拐してきた少年に土下座して助けを求める。


お前にプライドはないのか!と思われそうなものだが、私は地面を這いずって生きてきた。プライドなんて前世で捨ててきている。土下座するだけでロリコンとのベッド行きを免れられるのなら安いものだ。



「というか思ったけど私もお貴族様だけど?」

「えっ・・・えっ?」



お貴族様を敵に回したくないという言葉が気にかかり、言ってみると少年は私が貴族だったのを知らなかったのか私を二度見すると戸惑い出した。だが少年の表情から察するに『貴族のお嬢様がこんなプライドないものか?』とでも思っている様だ。

まぁ中身は地面這いずって生きてきた平民だし信じられないのもわかるが身体は一応貴族のご令嬢だ。



「・・・てっきり商人の娘か何かかと思ってた・・・いや商人の娘でももっとプライドあるか、」

「なんか、初めと比べてだいぶ毒舌になってない?」



しれっと失礼な事をいう少年にしっかりとツッコミを入れる。

こんな状況なのにも関わらずつっこめる自分の精神凄いなぁと我ながら感心してしまう。

本来の助けて貰えるように交渉すると言う目的を忘れていた私は急いで話を戻した。



「お願いします!助けて下さい!なんでもします!」



よくある助けを求める時の定番の言葉を必死に叫ぶ。

すると少年は少し考え込むと条件を出した。



「・・・3000万ゴールド。」

「へ?」



ちなみにゴールドとは前世で言う円と同じこの世界での通貨だ。

彼の要求は3000万ゴールド・・・3000万円と言う事だ。

私がいくらお貴族様とは言えどそんな大金をすぐに用意出来るかと言えば答えはノーだろう。



「僕からの脱出の手伝い無しに君が逃げられると思う?」



私の迷いに気が付いたのか少年は更に続けて話した。

相手に緊張を与えて契約を取ろうとするその手法はお見事としか言いようがない。

彼はきっと詐欺師に向いていると思う。


だが彼の言う事は事実で私が一人でどれだけ頑張ろうと相手は男。武術の経験がある訳でも、特別運動神経が言い訳でもない小さくて弱っちい私の体では脱出は不可能に近いだろう。


私が俯いて考え込んでいるとドアがガタッと音を立てて開いた。



「おい!まだか?」



やって来たのは当然と言うか先程も会った私の誘拐の依頼者(仮)のふっくらした・・・もういいや、小太りの中年男性だった。少年に急かす様にいう様子からして私が早く欲しくて欲しくて仕方がないのかもしれない。

この男が私を狙っていると思うと背中に嫌な汗が滲む。



「ごめんなさい、雇い主様。もっと``これ``で遊んでいたくて、少々お待ちいただけますか?」



少年は悪意のない純粋風の笑顔を男に向ける。この少年、演技力が高い。

黒い面を一切見せずにあたかも純粋な少年を演じている。


彼の演技に関心していると少年はそっと私に耳打ちをした。



「・・・これが最後。僕の手を借りる?」



どこか腹黒さを感じさせる冷たい声に少しだけ鳥肌がたつ。

ここで彼の手を借りなければきっと彼は今すぐにでも中年の男に私を渡すだろう。

そしたら想像するだけでゾッとする不幸な未来が待ち受けている筈だ。


私の選択肢は1つしかなかった。



「手を貸してください。」

「わかりました。雇い主のお嬢様。」



少年は少し怪しげに微笑むと私を抱き上げ、部屋にあるたった一つのドアへと走りだした。

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