第7話 誘拐されました。

「~~~、~~~~!」



人の話し声で目が覚める。目を開けると見えたのは前世の私の部屋の天井でもなければ、今世の簡素で可愛らしい部屋でもない、どこか冷たいコンクリート張りの天井だった。

周りを見ても見覚えなどない。


この状況から察するに・・・



「・・・・・・誘拐されたのかなぁ・・・」



小さな声で自分でも気づかないくらいにポロッと声が出た。

そっと話し声が聞こえる方の様子を伺う・・・が私が起きたことにも気付かずに何やら言い合いをしていて安心すると、とりあえず状況を確認しようと周りを見てみる。


誘拐されたと言っても幸いにも拘束されたりはしていないけれどこの部屋には窓は無く、ドアも1つしかない。

自力での脱出は難しそうだなと他人事の様に考える。



「だから!身代金目的と言っていただろ!?」

「ああ、そうだぞ。」



ふと言い合いをしている方へ目を向けると、先程会った赤髪の美少年とこう・・・言ってはなんだが少々ふっくらとした中年の男性が言い合いをしている様だった。


身代金目的なら殺される心配はない。少し安心しながらも少しだけ不思議な点を見つけた。

私の家は子爵家。貴族の爵位では下から2番目、そこまで高い爵位ではないし身代金目的ならもっと上の家門を狙うのではないのか。

そんな事を考えていると中年の男性と目が合った。



「おお、起きたか。よしでは赤髪、少ししたら私にもその娘を貸せよ。では後でな。」



そう言うと男性はさっさと出て行ってしまった。

男性の言っている意味がわからなく、混乱していると少年が私に声をかけてきた。



「あの、」



さっきの言い合いの時の強い声とは変わっておどおどしくか弱い声に私は少し驚いた。

今の少年は少し俯き気味で私を誘拐してきたにも関わらずどこか申し訳なさげな雰囲気だ。



「ごっごめんなさい!僕が誘拐してきたせいで貴方がっ!」

「ちょっと今状況がわかって居なくて・・・色々と教えてもらってもいいですか?」



誘拐犯であることは知っているがここまで弱々しい雰囲気だと流石に私も強く言えず出来る限り優しく尋ねる。



「はい!もちろんです!まず僕はあのデブ爺・・・いや男性から貴方を攫ってくる様にと依頼がありまして、貴方を誘拐しました。そして僕は身代金目的の誘拐と聞いていたのですがあの爺がせっかく誘拐したのだから貴方で楽しもうと言って居まして・・・」



なんというかこの少年、結構あれな性格をしている。先程までの涙目を一瞬にして笑顔に変えましたね。

多分世渡り上手なタイプだ。でも爺は言い過ぎかもしれない・・・いや私も少し思って居たけど。

それよりも・・・



「・・・私で楽しむって?」

「えっと・・・いわゆるベッドの奴です。貴方結構顔がいいので。」



その瞬間一気に顔が熱くなる。ベッドのやつって・・・私の年齢わかってます?!

世に言うロリコンだよね?!



「・・・あの助けてください!」

「無理」



一難去ってまた一難・・・今世はのんびりライフかと思いきやのんびりする暇は無さそうです。

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