第4話 馬小屋訪問

朝食を食べ終えると兄と共に馬小屋へ向かう・・・というのも

兄により馬肉のソテーにされかけた愛馬ロフに会いに行くためだ。


今回は会いに行くというよりも生存確認しに行くという方が正しいかもしれないけど。

というのもライ兄の冗談(?)で馬肉のソテーに・・・と言われていたロフ。その日の夕飯には出なかったけれど私は、ロフが本当に生きているのか不安になってしまったのだ。


それを察してかライ兄から「今度お前の馬に会いに行くか?」と誘って貰い、今に至る。

記憶喪失後、邸の外に出るのは今日が初めてで思った事がある。



「ライ兄様・・・ここから馬小屋まで後どのくらいですか?」

「あと5分ぐらいだろ。疲れたなら抱っこしてやろうか?」



あと5分。前にそれを言われてからかれこれ1時間は経っている。

そう、ここのブロント子爵邸は邸内だけではなく、庭も広いのだ。

頑張って歩いていたがそろそろ限界に近い。もういっそ心を無にしてライ兄に抱っこしてもらった方がいいかもしれない。そう思い始めた時やっと目的の場所が小さく見えた。



「ら、ライ兄様!馬小屋・・・馬小屋です!兄様!」

「そうだな。着いたら一回休むか。」



待ちに待った馬小屋にテンションが上がっている私を見てライ兄は優しく笑う。

うん。変わらぬ美少年。

兄の顔により少しだけ体力が回復された気がする。

そんなふざけたことを考えながら私は馬小屋の方へまた歩き始めた。


◇◆◇



「疲れたぁぁぁぁ~!」



ひたすら歩くこと1時間。やっと辿り着いた馬小屋で私は藁の上に寝転んでいる。

これは馬小屋まで歩いて来たことで疲れ切っている私に対して馬小屋の管理人さんがご好意で提案してくれたのである。何気に藁の上に寝転ぶという事に前世から憧れていた私は一もニもなく頷いた。


ちなみに藁の上には白い布が掛けてあり、ワンピースが藁まみれにならないように配慮されている。有難い。

そんなわけで私は伸び伸びと藁を堪能している。



「そんなに疲れてなら大人しく『抱っこして』とでも言えばよかったのにな。」

「私ももう10歳ですしそんな恥ずかしい事しません!」

「わかった、わかった。少ししたらロフに会いに行こうな。」



何というかこの邸の人達は10歳を子供扱いしすぎではないだろうか。

この前なんて使用人の人(男)に挨拶したら「毎日挨拶なんて偉いですね~」なんて言われて飴を渡されましたよ。

前世のお隣のおばちゃんを思い出しました。男の人にそれは失礼かもだけど。


話がずれたが、ライ兄は現在13歳、私の精神年齢は15歳という2歳差。

私は決してショタコンではないが、十分恋愛対象になってもおかしくない年齢だ。

そう、だから抱っこをお願いするなんて小っ恥ずかしくてできるはずがない。


そんな事を考えながら私はそのまま藁の上でゆっくりと眠りについたのだった。

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