第2話 記憶無しからの異世界スタート

「へっ?」



思わず変な声が出てしまった。私は確かに『三木 楓』で『アリス』と呼ばれたことなんてない。

心当たりのない名前に、見慣れない場所。・・・私はもしかしていわゆる異世界転生って奴をしたのだろうか。

私がぽかんとしていると兄の瞳が涙で潤んだ。



「もしかして、アリス、記憶喪失か⁈」



記憶喪失・・・アリスの記憶はないからあながち間違いではない?かもしれない。

そう考えた私はコクリと頷いた。私が不安そうにしているように見えたのか美少年はにこりと笑った。



「大丈夫だ。アリスは俺が守るから安心しろ。」



というか先程から疑問だったのだが、この美少年と私の関係は何なのだろう。

雰囲気からしてかなり親しい間柄だと思うけど・・・

記憶がないとわかってもらえた事だし思い切って聞いてみる事にした。



「あのっ、私とあなたってどういう関係だったんですか?」

「ああ、俺、ライデル•ブロントとアリスは兄妹だ。」



こんな美少年と兄妹だとは、かなり嬉しい。しかも今のところかなり人柄も良さそうだ。

楓の頃の義兄は確かに容姿はいい方だったが性格が酷かった。

あれを見てからこの素晴らしい兄を見ると今世はずいぶんと幸せな所に生まれたなぁと感じる。



「とりあえず、今は基本的な事だけ教えるな。アリス・・・まぁお前の名前はアリステア•ブロント。

ブロント子爵令嬢だ。今年で10歳になる。」

「へぇ~・・・」



自分の事なのに他人事に感じてしまうのはまだこの世界に馴染めていないせいだろう



「多分記憶喪失の原因はお前の馬・・・ロフに突進されたせいだろうな。」

「どういう状況ですかそれ・・・」



ライデル兄(長いのでライ兄と呼ばせてもらう)曰く、毎日私が世話をしに行っていた愛馬、

ロフに私は数日用事で会うことができず久々に会った日、ロフが興奮のあまり私に猛突進し、

私が倒れた・・・という経緯らしい。


・・・ロフ怖すぎる。興奮のあまり猛突進とか恐怖以外の何者でもない。



「・・・ロフ怖いですね。」

「なら今日の夕飯は馬肉のソテーが出るかも・・・」

「やめてくださいね⁈」



しれっと冗談(本気?)を言う兄はきっと私の不安を和らげようとしてくれているのだろう・・・

けれどお願いだからロフのソテーコースはやめて欲しい。



「大丈夫だ!多分やらねえよ・・・多分」

「多分って事は可能性はあるんですか?」

「・・・・・・」



沈黙が走る。その日の夕飯まで私はドキドキしていたが、夕飯は白身魚のソテーで安心した。

そしてその事に気づいたライ兄により大爆笑されました。

その時わたしは記憶喪失になった可哀想な妹対応はどこに行ったのかと遠くを見つめていた・・・

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