第19話 黒川圭子

大盛りの白米を頬張る弟の姿を見つめる。相変わらずの食いっぷりだ。

ただ無邪気さがなくなっている気がする。

やはりあの男の影響か。

圭子もタレで味付けして焼いた肉と白米を食べる。

あまり喉を通らない。それでも肉一皿とご飯を完食した。

「ごちそうさま」と箸を置く。

「姉ちゃん、体調でも悪いの?」

「お姉ちゃんだって食欲ないときあるんだから」

「ありえねえ」

「今日洗い物しといて」

「わかったよ」素直に応じた様子で少しホッとする。


圭子は自室に戻り、書類を取り出す。相変わらず量が多いなあ。

でも今回は目当ての男がいる。付箋のついたページを抜く。

顔写真と名前と簡単なプロフィールが記載されている。

清潔感のある元体育会系のような風貌。すっかり男に相手にされなくなった小銭を持っている程度のマダムたちには受けが良さそう。

とはいえやはり男性受けの方がいいんだろうなあ。これを機会に男性向けも考えようかしら。

圭子はどこかに電話をかける。

「この和田祥平って男、採用。急ぎ手配してくれる?安めに設定してもいいわ。とりあえず回転数増やしていこ」

私の弟に手を出すだけならまだしも、彼には他にも関係を持った生徒たちがいる。皆卒業したり退学したりと足取りをつかめないが、現時点で15人ほど判明している。今までよく問題にならなかったのが不思議なくらいだ。

私も表沙汰にするつもりもないし、ビジネスチャンスとして利用させていただくだけだ。

「これでまた美味しい肉が食えるぞー」

圭子のお腹が大きく鳴り響く。

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