第12話 道岡雄介

 水曜日ともなると、徐々に疲労がたまり始める。キーボードを打つ手も重く感じる。でもこの報告書を完成させないと帰れない。定時は関係ない。仕事を終わらせられるかどうか、毎日必死だ。 周囲は既に帰っていて、職場には雄介だけ残っていた。背もたれに体を預け天井を見る。

 昨日祥平に偉そうなことを言ってしまった。気晴らしに合コンをしたことに罪悪感が止まらない。彩に合コンのことを言ったら、怒るだろうか。 それとも興味なさげな反応をするだろうか。いずれにせよ彩の本音を知るのが怖い。

 

 部長からメールが来ていた。

「先方が、君のこと気に入っているようだ。頑張ってくれよな」

 胸が熱くなる。仕事で人の役に立てた。

 そうだ。俺はやれる。仕事のやりがいが生きがいにつながっている。

 そして、そんな俺を見れば彩も惚れ直してくれる。彼女が今後の人生をどのように過ごすか、口出しする気はないが、少なくとも俺が隣にいてやりたい。

 雄介は栄養ドリンク剤を飲み干し、仕事を続けた。

 

 終電を乗り過ごし、タクシーを捕まえた。もちろん自腹だ。残業代を考えるとトントンだ。家の近くのコンビニで降り、缶ビールを買う。ついでに、と缶チューハイも買う。

 家に帰り、スーツのまま4缶飲み干す。ジュースを飲んでいるように心地いい。酔いと眠気に身を任せ、そのまま眠りについた。


 翌朝、誰かに頭を殴られているような感覚で起き上がる。慌ててシャワーを浴び、昨日と同じワイシャツを着た。少し酒臭いが、バレないだろう。駅まで走る。汗だくだ。

 会社に着くと、上司に「ちょっと匂うぞ」と言われたが、俺は仕事で挽回する男だ。そのくらいのこと気にしない。パソコンに向かう雄介の口角が上がる。体の内側から湧き出す何かを感じていた。

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