第3話 道岡雄介
昨晩はあまり寝付けなかった。彩の態度がどんどんそっけなくなっていっているようで気がかりだった。寝不足の代償は大きく、月曜から体が重く感じる。本当は泊まりたかった。けど、そうさせない彼女の圧があった。俺の何かが悪いのか、他に好きな男でもできたのか、まったく考えが読めない。彼女の家に行っても居心地が悪いが、行かなかったら行かないで、彼女は何も言ってこない気がしていた。
雄介は「行ってきます」と近くの同僚に声をかけ、外出した。客先でのミーティングまで少し時間があるので、カフェに入り今週末の合コンのことを考えることにした。5人対5人の真剣勝負だ。雄介は正直に彼女がいることを言うか、隠すか迷っている。後ろめたいが、彩がもし別れたがっていたら、俺も新しい出会いを探したい。
事前に男性陣の顔写真は女性陣代表に送付済みだ。先日男だけで飲みに行った時の写真だ。その中の2人に期待が集まっているらしい。こちらの思惑通りだ。
大学生のときから昌と祥平はモテた。この2人さえいれば合コンは勝手に盛り上がるし、俺もそれで株を上げたこともある。だけど昌も祥平もあまり出会いに興味がなさそうだ。それがまた女性陣の心をくすぐるらしい。うらやましい。
仕事で行けるかわからない、と言っていた祥平に連絡してみる。
「土曜、合コン来れそう?」
忙しいからしばらく返事は来ないだろう。さて、俺も商品売ってくか!コーヒーを飲み干し、雄介はカフェを出た。
プレゼンの手ごたえは良かった。あとは契約を交わせればうちのオフィス家具を置いてもらえる。会社に戻り報告書を作成すると、夜の9時を過ぎていた。上司にメールし、帰宅することにした。
祥平からメールが来た。
「なんとか行けそう。夕方まで部活見てなきゃいけないから、少し遅れるかもしれない。そのときはごめん」
「おう。みんなで待ってるよ」
昌はテンションが低いが、行くと意思表示しているので、きっと大丈夫だ。
彩のことはしばらく気にせず、合コンに集中しよう。俺も独身として行くか。
ニヤニヤしながらコンビニに寄った。缶ビール2つと柿ピーを持ってレジに行った。レジ横のフライドチキンが魅力的だったので、2つ購入した。
シャワーを浴び、トランクスだけはき、缶ビールを開ける。
「そういやまだ月曜だっけ。ま、いっか」
喉を通りすぎる冷たい液体が、体を満たしていく。
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