第254話 春風vs煌良4 真紅の一閃
(あ、何かデケェのが来るのを感じるな)
煌良から放たれた「紅蓮大流星」が春風に向かってくる中、春風本人はそんなことを考えていた。
大きな「力」が近づいて来るのが、目を閉じてもわかる。
このままだと自分の命が危ないということも。
だが、それでも春風は構えを解かないし、今いる場所からも一歩も動く気はない。
(あぁ、この状況、『あの時』の事を思い出すなぁ)
そう考える春風の脳裏に浮かんだのは、ウォーレン・アークライトとの戦いの時だった。
ウォーレンの最強の技「聖光轟雷斬」に対し、居合い切りで迎え撃ったあの時は、スキルや称号による補正と彼岸花の力、そしてルーシーのおかげで、ウォーレンに勝つことが出来た。
しかし、今回はそのスキルを自らの意志で「オフ」に切り替えたうえに、ルーシーの手助けもない。
今、この状況で頼りになるのは、彼岸花の力に加えて春風が持つ唯一の五つ星スキル[心技体]と称号「異世界(地球)人」によって底上げされた身体能力と、この世界に来てから今日までの間に磨き上げてきた技術。そして、春風自身の「意志」と「覚悟」だけだ。
(あぁ、やっぱ怖いなぁ)
春風は心の中でそう呟いた。
ウォーレンとの戦いの時だって、スキルや称号による補正があっても怖かったのに、そのスキルをオフにしている今の春風は、あの時以上に恐怖を感じていた。
(……だけど、『絶対に逃げない』、『絶対に勝つ』、『勝って生き残る』って思いは、あの時よりも強くなってると思う! だから……)
「やるぞ、彼岸花」
静かにそう呟くと、春風はグッと彼岸花の柄を握り、閉じていた両目をカッと見開いた。
次の瞬間、鞘に納まった彼岸花から、「ドクン」という「音」が聞こえた。勿論、それは春風にしか聞こえない「音」なのだが、
(今のは!?)
その「音」は凛依冴にも聞こえていた。
その後、凛依冴は静かに腰につけている革製の少し大きめのポーチに手を当てた。
「……まさか」
誰にも聞かれないように小さくそう呟いた凛依冴。
しかし、そうこうしている間にも、炎を纏った流星が春風の目前に迫ってきた。
仲間達が慌てふためく中、春風は再び静かに呟く。
「……一刀両断」
今、春風が放とうとしているその「技」もまた、以前繰り出した「トルネード・ストライク」や「マキシマム・パニッシャー」などと同じようにスキルから生まれたものではなく、春風自身が考えたオリジナルの「技」だ。当然、その「技」にも名前はある。
「技」の名前の由来は、ウォーレンが放った「聖光轟雷斬」を打ち破った時、確かに「雷を斬った」という手応えがあった事から、こう名付ける事にした。
「
そして、春風は静かにその「技」名前を叫ぶと、素早く彼岸花を抜いた。
鞘から抜き放たれた真紅に輝く刀身が、炎の流星にぶつかる。
普通に考えれば、スキルの補正がない斬撃が、スキルから生まれた強力な技に敵うわけがないだろう。
だが次の瞬間、炎の流星はまるでバターのようにスパッと真っ二つに切り裂かれた。
「な、なん……だと!?」
目の前で起きたまさかの出来事に驚く煌良。
しかし、その後すぐにハッと我に返った。
何故なら、炎の流星が斬り裂かれた時に生まれた斬撃の波動が、そのまま煌良に向かって襲いかかってきたからだ。
「くっ!」
煌良はすぐに矛全体に魔力を纏わせ、その斬撃の波動を防御した。
すると、ドゴォンという大きな音と共に爆発的が起き、矛は炎の流星と同じように真っ二つになり、爆発に巻き込まれた煌良は後ろに吹き飛ばされた後、体を何度も地面にバウンドさせ、ゴロゴロと転ると、そのまま意識を失った。
『……』
その様子を見て、誰もが口をあんぐりと開けて呆然としていると、春風はまた、
「……俺の勝ちだよ、力石君」
と、小さく静かに呟いて、すっかり輝きを失くした彼岸花を鞘に納めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます