第250話 歩夢vs麗生
「「学っ!」」
学が水音に倒されたのを見て、煌良と麗生は驚きの声をあげた。
「麗生、回復を!」
「あ、ああ! すぐにやる!」
煌良にそう言われると、麗生はすぐに小弓を構えた。
生み出されたのは、緑色に輝く光の矢だ。
麗生はそれを、気を失っている学に向けて放とうとした。
その時、
「させないっ!」
という叫びと共に、歩夢は麗生に向かって薙刀を振るった。
「ちぃっ!」
麗生は間一髪のところでそれを避けたが、それと同時に先程まで学に放とうとした緑色の光の矢は消滅してしまった。
「邪魔をするな海神っ!」
そう叫んだ麗生は、すぐに新たな光の矢を生み出して、それを何発も歩夢に向かって放った。
だが、
「せいっ!」
と歩夢は大きく回すように薙刀を振るって、その光の矢を全て打ち消した。
「くっ! だっだら!」
麗生はその場に留まり、意識を集中する。
次の瞬間、先程のものとは違う大きな光の矢を生み出した。
「クラスの人間に
その後、麗生はその大きな矢を空に向けて構えると、
「お前が悪いんだからな、海神」
と言うと、そのまま大きな矢を放った。
すると、放たれた矢が落ちようとする瞬間、
「魔弓技、『アローレイン』!」
と、麗生がそう叫ぶと、大きな矢は幾つもの小さな矢に分裂し、歩夢に落ちようとしていた。
「ユメ、危ない!」
驚いたリアナは歩夢に向かって叫んだが、歩夢は落ち着いた様子でその場から一歩も動こうとしなかった。
歩夢は大きく深呼吸すると、自分に向かって落ちてくる無数の光の矢を見て、
「カァッ!」
と、まるで騎士達を気迫で吹っ飛ばした春風のように叫んだ。
次の瞬間……。
ブワッ!
歩夢の叫びを受けた光の矢は、まるで霧散するかのように全て消滅した。
『えぇ?』
それを見た麗生と周囲の人達は、全員開いた口が塞がらなかった。
そんな彼女達をよそに、歩夢は「フゥ」と一息入れると、
「やった! 上手く出来た」
と、とても満足したと言わんばかりの表情をした。
すると、
「わ、海神、お前……」
「ん?」
「
と、麗生は歩夢を睨みつけながらも、恐る恐るそう尋ねてきた。
それに対して、歩夢はキッパリと答える。
「
「はぁ!?」
「これ教わった時に、お母さんが言ってたんだ。『良い女ってのは、気迫で相手を圧倒するもんなんだよ』ってね」
堂々とした態度でそう言った歩夢に、技をかき消された麗生だけでなく周囲の男性達は、
『そんなわけあるか!』
と突っ込みを入れたが、
『そ、そうだったのか!』
と、何故か女性達は衝撃を受けたかのように納得した。特にリアナ、イブリーヌ、ジゼル、凛依冴、そして、ルーシーは目をキラキラと輝かせていた。
因みにその時、煌良と戦っていた春風は、何故かビクッと悪寒に襲われた。
歩夢はそんな中でも話を続ける。
「あ、因みにこれ、私だけじゃなく、フーちゃん
「ふ、フーちゃん?」
頭上に大きな「?」を浮かべて、麗生は首を傾げた。
「というわけで……」
「へ?」
間に抜けた声をもらす麗生の隙をついて、歩夢は素早く麗生の背後に回り込むと、
「隙あり」
「しまっ……!」
ゴッ!
「グハッ!」
歩夢は麗生に、思いっきり薙刀の
麗生は意識を失う直前、
「ぐ……、お前、こんなに、強かったのか?」
と歩夢に質問した。
歩夢は再び堂々とした態度で答える。
「うーん、この国に来てからいっぱい鍛えられたから」
「お、教えてくれ。何がお前を、そこまで強くした?」
その質問に対し、歩夢は再びキッパリと答える。
「フーちゃんへの、『愛』!」
その答えを聞いて麗生は、
「いや、『フーちゃん』って誰!?」
と突っ込みを入れようとしたが、
「フ。そ、そうか……」
と、納得すると、そのまま学と同じように意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます