第249話 水音vs学
こうして帝城内を舞台に、水音vs学、歩夢vs麗生、そして、春風vs煌良の戦いが始まった。
それぞれが力と技を振るう中、まず大きく動いたのは、水音と学だった。
「はぁッ!」
ガキィン!
「うぐっ!」
固有職能「戦鬼」の力と、帝国で磨き上げた技術、そして、愛用の長剣ガッツを振るいながら、水音は学に猛攻撃を繰り出していた。
(ぐ、凄いパワーだ!)
対する学は、自身の武器である大型の盾と職能「盾闘士」が持つスキルを駆使して、水音の攻撃に耐えていた。
しかし、ただ
(く! 勇んで渡君に挑んだけど、なんて頑丈なんだ。おまけに、時々カウンターを浴びせてくるから、全然ダメージを与えたっていう感じがしない!)
そう考えながらも、水音はそれでも攻撃を繰り出す。
その攻撃を、学は防御しつつ、隙をついて攻撃を仕掛ける。
お互い決定的なダメージを与えることが出来ず、そんな攻防を繰り広げていく内に、次第に2人は体力や魔力、水音は鬼力を少しずつ消費していた。
(このままじゃいけない、ここで勝負をつける!)
そう考えた水音は、すぐに学から距離を取ると、両手でグッとガッツを握り、両目を閉じた。
(な、何だ!? 何をする気なんだ桜庭君!?)
心の中でそう呟いた学は、盾を構えてその場でジッと水音を見詰めた。
そんな学を前に、水音は大きく深呼吸すると、
「フッ!」
と、水音は全身から青い炎のようなオーラを放出した。
「こ、これは!?」
驚く学を他所に、水音はその青いオーラをガッツに纏わせた。
漆黒の刀身を持つ長剣が、柄を握る両手ごと青いオーラに包まれ、やがてそれは別の形へと姿を変えた。
そして出来上がったのは、
両手ごと異形の姿となった愛剣を握って、水音はその名を叫ぶ。
「招来、『鬼力剣・一本角』!」
その名を聞いて、学を含めた周囲の人達が「おおっ!」と驚きの声をあげる中、学がゆっくりと口を開く。
「す、凄い。それが、君の職能の力なのかい?」
恐る恐るそう尋ねた学に、水音は答える。
「それだけじゃないよ。この力は元々、僕ら桜庭の一族に先祖代々受け継がれてきたものだ。この世界に召喚されてから、五神教会が崇める神々から与えられた職能の所為で上手く引き出す事が出来なかったけど、固有職保持者になった今の僕は、この力を最大限まで引き出す事が出来るんだ。そしてこの『一本角』は、僕が引き出せる最大限の力の形。それを今日……」
水音はそう言うと、一本角を天に掲げて、
「ここで君に、ぶつける!」
と、真っ直ぐ学を見てそう言い放った。
そのあまりの気迫に、学は一瞬怯んだが、すぐににニヤリと笑って、
「上等だよ」
と、小さく呟くと、持っている盾に自身の魔力を纏わせて、巨大なエネルギーの壁を形成した。
「受けてたってやる!」
その場に踏みとどまって迎え撃つ準備をした学。
水音はそんな学を見て、
「行くよ、渡世君!」
と叫ぶと、学が作り上げたエネルギーの壁めがけて、勢いよく一本角を振り下ろした。
長大な刃が、エネルギーの壁にぶつかる。
「ハァアアアアアアアッ!」
「ウオオオオオオオッ!」
両者共に一歩も引かぬ状態の中、
「いっけぇえええええええっ!」
水音の刃が、学の壁を真っ二つにした。
「あぁっ!」
ドォオオオオオオオン!
「グアアアアアアアッ!」
その衝撃を受けて、学は体を数回程地面にバウンドさせると、
「ぐ! つ、強い……」
そのまま、意識を失った。
水音はそんな学を見て、
「僕の勝ちだよ、渡世君」
と、小さく呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます