第248話 激突、3対3……の前に


 突如として起こってしまった3対3の戦い。


 一方は春風、水音、歩夢の3人。


 もう一方は煌良、学、麗生の3人。


 両者は共に同じ世界に住み、同じ学校に通うクラスメイト達だ。


 だが現在、故郷とは別の次元に存在する異世界にて、そのクラスメイト達はそれぞれ武器を構えてお互い睨み合っている。


 誰もがその様子を固唾を飲んで見守っていると、


 「あ、いけね!」


 と、何か大事な事を思い出したかのように、春風は左腕のアガートラームMkーⅡに向かって、


 「すみませんジゼルさん、ちょっと出て来てほしいんですけど」


 と話しかけた。


 すると、アガートラームMkーⅡの、甲の中央部にはめ込まれた魔石が光りだし、そこから1人の女性ーージゼルが現れた。


 突然目の前に現れたジゼルに、煌良達が「おぉ!?」と驚き、その姿に見惚れていると、


 「お呼びでしょうか? 春風様」


 と、ジゼルは優しく春風に話しかけた。


 すると、春風は申し訳なさそうな表情で、


 「すみませんジゼルさん。ちょっとみんなのところにいて欲しいんですが、よろしいでしょうか?」


 と頼んだ。


 「え、私、足手まといですか!?」


 ジゼルはショックを受けたが、


 「いえ、そうじゃないんです。このまま戦うと、になってしまいますのでっていう意味です」


 と春風がそう説明すると、ジゼルはすぐに、


 「ああ、そうでしたか!」


 と納得し、


 「そういう事でしたら、わかりました。では春風様、水音様、歩夢様、お気をつけて」


 と言うと、ジゼルは仲間達のもとへと下がった。


 春風は「うん、これで良し」と小さく呟くと、改めて煌良達に向き直って、


 「さぁ、勝負といこうじゃないか」


 と、彼岸花を構え直した。


 すると、


 「「「ちょっと待てい! 今の人(?)は誰だ!」」」


 と、煌良達に問い詰められたが、


 「後で説明するからそれまで待って!」


 と、春風はすかさずそう返した。


 ここで普通の感覚なら、


 「そんなんで納得出来るか!」


 と、突っ込むところだろう。


 「「「わかった!」」」


 だが、煌良達は納得した。


 その様子に誰もが「えぇ?」となっている中、春風は煌良達に向かって、スキル[英知]を発動させた。


 力石煌良、職能:武人。


 渡世 学、職能:盾闘士。


 白銀麗生、職能:魔弓士。


 (へぇ、力石君が前衛で、渡世君が盾役、鉄さんが後衛ってわけか……)


 煌良達のステータスを見て春風がそう納得していると、


 「で、春風。この後どうするの?」


 と、水音が小声で尋ねて来た。


 「うーん、そうだな……」


 と、春風も小声で水音、歩夢と話し合っている中、煌良達の方も、


 「学、麗生。いけるか?」


 「うん。相手が幸村君達だから、ちょっと緊張するけど、いけるよ」


 「私もだ。問題ない」


 と、こちらも小声で話し合っていた。


 その後、話し合いが終わったのか、両者は再び睨み合っていると、


 「じゃあ、いくよ!」


 「ああ!」


 「うん!」


 先に動いたのは、春風達だった。


 春風はまず、水音に風魔術「アクセルムーブ」をかけた。


 その後、素早さを強化された水音が、ガッツを持ったまま煌良達に向かって突進した。


 否、正確に言えば、向かった先は、


 「!?」


 「「学!」」

 

 学だった。


 水音は学めがけてガッツを振るった。


 それに対し、学はその攻撃を、手にした大型の盾で防いだ。


 「学!」


 それを見た麗生は、水音に向かって小弓を構えた。


 そこには矢がなかったが、代わりに細い棒状の光があった。


 麗生はその光を矢として水音に放とうとした。


 ところが、


 「させない!」


 「っ!」


 突然の声に驚いた麗生が、その声がした方を見ると、そこには薙刀を麗生に向かって振るおうとする歩夢がいた。


 「ちぃっ!」


 麗生はすぐに向きを変えて光の矢を歩夢に向けて放ったが、その矢は歩夢に当たることはなかった。


 「ふっ!」


 歩夢はそのまま薙刀を振るったが、麗生はそれを小弓で防いだ。


 「私が相手だよ、白銀さん」


 「く、海神ぃ!」


 始まった2組の戦い、それを見た煌良は、


 (学。麗生。という事は、俺の相手は……)


 そう思って正面を見ると、そこには今にも煌良に向かって彼岸花を振るおうとしている春風の姿があった。


 ガキィンッ!


 煌良はその一撃を、持っていた矛で受け止めると、ニヤリと笑って口を開く。


 「やはりお前か、幸村ぁ!」


 「あぁ。君の相手は俺だよ、力石君」


 それに対し、春風は真っ直ぐ煌良を見て、真面目な表情でそう答えた。

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