第246話 説明終了、からの……
そして翌日、現在に至り、
「……とまぁ、そんなわけで、俺とイブリーヌ様との絆は更に深まりましたとさ」
「ふざけるなぁあああああああっ!」
春風が昨夜の出来事についてそう締め括ると、モーゼスは怒りのあまり頭を抱えて絶叫した。
因みに、春風と絆を深めたイブリーヌはというと、春風の後ろで顔を赤くしていた。
だがそうとは知らず、モーゼスは怒りで体を震わせながら、
「き、貴様、イブリーヌ様と、
と、精神的余裕がないのか、最早敬語を使うことも忘れて、春風に向かってそう尋ねた。
それに対して、春風は「うーん」とわざとらしく唸ると、
「アンタには、知る必要のないことだよ」
と、不敵な笑みを浮かべてそう答えた。
その瞬間、何かが切れたかのようにモーゼスは、
「行け、誇り高き騎士達よ! あの男、幸村春風を……あの『悪魔』を倒すのだ!」
と、側にいる騎士達にそう命令した。命令を受けた騎士達は、一斉に剣を抜き、春風に向かって構えた。
それを見てハッと我に返ったイブリーヌは、
「騎士達よ! セイクリア第2王女として命令します、今すぐ剣を下ろしなさい!」
と、騎士達に命令したが、モーゼスは「フッフッフ」と笑いながら、
「無駄ですよイブリーヌ様。彼らは私達教会が育て上げた優秀な騎士です。故に、その命令権は教主である私の方があなたよりも上なのです」
と説明した。
それを聞いてイブリーヌは「そんな!」とショックを受け、隣にいるギルバートも「ちっ! 腐ってんな!」と小さく悪態をついた。
モーゼスはそんな2人に構わず、
「さぁ、行きなさい!」
と命令すると、騎士達は一斉に春風に襲い掛かってきた。
それを見て、「これはいけない」と思ったリアナが、
「ハル!」
と、春風のもとに飛び出そうとすると、
「あー皆さん、ちょっと耳を塞いでください」
と、春風は落ち着いた表情で、リアナ、ギルバートやイブリーヌ、そして仲間達にそう頼んだ。
リアナ達は一瞬「へ?」と呆けたが、すぐに春風に言われた通り耳を塞いだ。
春風はそれを見て、
「ありがとうございます」
と言うと、向かって来た騎士達の前に一歩出て、
「カァッ!」
と、大声で叫んだ。
すると、
『ぐあああああっ!』
と、騎士達はまるでもの凄い衝撃を受けたかのように一斉に吹っ飛ばされ、全員残らず地面に倒れ伏した。そしてモーゼスと配下の信者達もその余波を食らったのか、バランスを崩して地面に尻餅をついた。ただし、ラルフだけはどうにか踏ん張っていたが。
「ハァ。オイオイ、『誇り高き騎士』ともあろう者がこの程度で情けないな」
春風は目の前で倒れている騎士達を見て、溜め息混じりにそう言った。
すると、
「……其方、一体何をした?」
と、それまで黙っていたラルフが、春風に向かって質問した。
春風は真っ直ぐラルフを見て、落ち着いた口調で答える。
「普通に
「……それは、何かのスキルか? それとも、固有職保持者としての能力か?」
再びそう質問したラルフ。しかし、春風は落ち着いた口調のまま答える。
「ぶつけるだけなら、
春風の答えを聞いて、ラルフは「そうか」と小さく言うと、背中の槍を構えて春風の前に出ようとした。
それを見て、春風はスッと右手をラルフの前にかざすと、
「ラルフさん、俺は、無益な戦いを好みません。そこで倒れている騎士達とモーゼス教主を連れて、どうかこのまま帰ってください。そうすれば、俺はあなた方を追うようなことはしません」
と、ラルフに向かって説得するかのように言った。
だが、ラルフはそれでも槍構えたまま、
「……『嫌だ』と言ったら?」
と春風に向かってそう尋ねると、春風はかざしていた右手を、腰の彼岸花の柄に置いて、
「……申し訳ありませんが、昨日俺が言いましたように、俺は意志と、信念と、覚悟をもってあなたを退けます」
と、静かに言い放った。
その言葉を聞いて、その場にいる誰もがゴクリと固唾を飲んだ、まさにその時、
「「「ちょっと待った!」」」
と、未だに起き上がれないモーゼスの背後で、そんな声が響き渡った。
春風を含め、全員「何事か!?」と、その方向を見ると、3人の人物が門を潜って入って来た。
3人は皆フードがついたマントを羽織っていて、顔はすっぽりとフードをかぶっていた為、良く見えなかった。
誰もが頭上に「?」を浮かべていると、3人はそれぞれ口を開く。
「そいつの相手は、俺達がしよう」
「ですので、ラルフ
「他の騎士達も、動けるなら下がってほしい」
3人の声を聞いて、
(あれ? この声って……)
と、春風が首を傾げていると、
「
と、3人のうちの1人がそう言うと、全員かぶっていたフードを取った。
「……あ!」
その素顔を見て、小さく驚きの声をあげた春風。
マントを羽織った3人の人物の正体、それは、
「……力石君、渡世君、白銀さん?」
「勇者」こと、クラスメイト達だった。
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