第243話 襲撃者◯◯◯◯さん


 春風を暗殺する為に現れた4人の襲撃者。


 春風がそのうちの1人の覆面を外すと、その正体は、


 「……ルイーズさん!?」


 セイクリア王国騎士、ディックの部下である女性、ルイーズだった。まさかの襲撃者の正体に、春風とディックは勿論、水音以外のクラスメイト達も驚きを隠せなかった。


 その後、ハッと我に返った春風は、ルイーズに向かって、


 「ルイーズさん。王国騎士であるあなたが、何故こんなことを?」


 と尋ねると、


 「くっ、殺せっ!」


 と、ルイーズはそっぽを向いてそう答えた。他の襲撃者達も同じくそんな様子だ。


 それを聞いた春風は、


 「ど、どうしよう兄さん! 『くっ、殺せ』って言ったよ! 生『くっころさん』だよ!」


 と、若干興奮した様子で冬夜に言った。


 そんな春風に対して冬夜は、


 「お、お、落ち着くんだ春風! 僕も初めてなんだ! 本物の『くっころさん』、初めて見たんだ!」


 と、こちらも興奮していた。


 そんな状態の2人を見て、


 「ちょいちょい、ハルッちにフユッち、『くっころさん』に出会って興奮する気持ちはわかるけど、ここは一旦おちつい……」


 と、恵樹が呆れながらも2人を宥めようとすると、


 「あ、そうだ!」


 『?』


 と、春風はズボンのポケットに入れてた零号【改】を取り出すと、少し操作して、


 「お願いします、ルイーズさん! さっきのセリフをもう一度!」


 と、ルイーズに向かってそうお願いした。


 すると、水音らクラスメイト6人が、


 『コラコラコラ! お願いするな! そして録音しようとするな!』


 と、全員一斉に突っ込みを入れたが、


 「くっ、殺せっ!」


 『コラコラコラ! アンタも付き合わなくていいから!』


 と、ルイーズもオーケイした為、こちらにも一斉に突っ込みを入れた。


 そんな彼らの様子に、エルード勢は、


 (……何なんだ、一体?)


 と、全員頭上に「?」を浮かべていた。


 その後、無事録音が出来て満足した春風は、残りの襲撃者達の覆面を外すと、


 「すみません、この中で知っている人はいますか?」


 と、イブリーヌとディックに質問した。


 イブリーヌは襲撃者達の顔を見て、


 「……申し訳ありません」


 と、首を横に振りながらそう答えたが、ディックは若干言いにくそうに答える。


 「……間違いない。彼らは所属する部隊こそ違うが、全員五神教会から配属された騎士達だ」


 「そうなんですか!?」


 「ああ。そしてこのルイーズもまた、教会から配属された騎士の1人なんだ」


 「マジですか!?」


 「ああ、マジだ」


 まさかの事実に驚いた春風だが、すぐに「あれ?」となってディックに、


 「え、ちょっと待ってください。王国の騎士さんが、何でこんな暗殺者みたいな芸当が出来るんですか? 俺の部屋に来た時のこの人達、かなり手慣れた様子でしたけど」


 と尋ねた。


 「ああ、それは……」


 ディックが答えようとした、まさにその時、


 「ディック隊長、そのに余計な事は言わないでいただきたい!」


 と、拘束された状態のルイーズがそう怒鳴ってきたが、


 「そうはいかない、彼はこの一件の被害者だ。彼には知る権利がある」


 と、ディックはルイーズのセリフを一蹴した。


 (オイオイ、『悪魔』って俺の事だよな)


 春風は苦笑いしながら心の中でそう呟くと、


 「……オイ、そこのお嬢さん」


 と、横で発せられた声に春風が「ん?」と振り向くと、そこには全身から黒いオーラを放出した冬夜がいた。


 「に、兄さん?」


 「『悪魔』っていうのは僕の弟の事かな? よし、さっき『殺せ』って言ってたから、望み通りこの場で息の根を止めてやろうじゃないか」


 冬夜は邪悪な笑みを浮かべてそう言うと、ルイーズら襲撃者達に向かって魔術を放とうとした。


 「わーっ! 兄さん、落ち着いて! ディックさん、俺が兄さんを止めている間にはよ説明を!」


 「わ、わかった」


 冬夜を落ち着かせながら必死で訴える春風を見て、ディックは「コホン」と咳き込んで気持ちを落ち着かせると、真面目な表情になって口を開いた。


 「彼女は『騎士』と『暗殺者』、2つの職能を与えられた職能保持者なんだ」

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