最終話 千の風になって

ロインはいつも通り食堂で食べていた。


 しかし、数時間後食堂で食べていた約半数の者が吐き気と下痢を催し高熱を出した。


 ロインもその一人である。


 様々な薬を調合するも効き目は薄かった。


 ロインは「もっと遊びたいな」と言ってこの世を去った。


 ロイン、享年四五歳。


 ロインだけでなくこの時かなりのベルダーシュが食中毒で亡くなった。


 ロインは最後まで雷鳥の仮面の呪文を伝授しなかった。この時伝説の魔鳥へ化身する人物がフォークロアキャッスルでは誰も居なくなった。


 火葬にするものが増えた。


 ロインが屋上で火葬されるとき、皆は悲しんだ。


 「悲しみで送ってはダメだ。皆よ、踊るんだ!!」


 副官から自動的に第三代フォークロアキャッスルの城主となったゾイが言う。


 ゾイの言葉に従い皆は踊りながら火葬されるロインの周りで踊る。


 「風になれ、風になるんだ!」


 闇の狼の仮面を被りながらゾイが言う。


 息子のレインも妻のメイも踊る。レインはもう二一歳になっていた。


 ロインの物語はこうして終わる。


 ロインの墓は地下に置かれ墓碑が刻まれ骨壺とともに納められた……。


 第三代フォークロアキャッスル城主ゾイは元闇のベルダーシュだが、公平で公正な城主だったと伝えられる。ゾイの墓はロインの墓の横にある。ゾイが生前そう希望したのだ。なお、ゾイは闇の狼の仮面を他の色に変ることはついに無かったという。ゾイは四二歳で城主となった。そして五八歳でこの世を去った。そして第四代城主より先の城主は名前だけ掘られているがどういう城主だったのかは分かっていない。ただし最後の城主だけはどういう人物なのかを我々はインディアン文字のおかげで分かっている。


 最後に、こう記されていた。


 『我、ジョニロ。すでに朽ち果て打ち捨てられたフォークロアキャッスルの最後の城主としてインディアン居留地へ行く。ここに宝箱を置き、この宝箱の中にロインの冒険譚及び後日談を記述する。我は最後のフォークロアキャッスル城主にして最後のフォークロアキャッスル住民であるが、ある者は私を笑い、ある者は私を狂人扱いする。いつの日か我々の物語が日の目を見ることを願う。そして我ジョニロは城主でありながらここフォークロアキャッスルの墓に入れないことを恨む。


一八二一年五月一四日 ジョニロ』


<ロインたちの後日談 終了>

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