第二二話
「まことか?」
ロインが乗り出した。
「本当です」
「仮面が、のう」
「二つの能力を一つに出来ます」
「もちろん失敗することもあるので要注意なのですが」
「そのためには仮面に埋め込む魔石を二つにする必要があります」
「そして呪文を二つ唱えるのです」
「するとうまく行けば二つの能力が合体した仮面が、失敗すると仮面が砕けます」
「もちろん二つの特徴を兼ね備える表情にせねばなりませぬ」
「化身するときも二つ分の呪文が必要です」
ネイティブアメリカンにとって動物とは神の化身である。つまり神を仮面に降ろすのである。その神同士を合体するに等しいことを言っているのである。
しかしよく聞くとリスクが大きい。
「ゾイよ、どう思う?」
「リスクが高いと思われます。仮面が砕けるということは神が砕けるのと同義。自分に降ろす神を壊すことは出来ない」
「私も同意見だ」
「まして神格というのは相反する神も居る。仲の悪い神同士との合体を行ったら仮面を被る者にも影響を及ぼす」
「とうてい受け入れられない」
「そうですか……」
「進言、誠に申し訳ありませんでした」
「いや無駄ではない」
「は?」
「合体などせずとも元から強い神を宿す仮面を作っていい。もっとも強い神を仮面に宿せる術者は高級魔術を網羅するくらいでないといけないが」
「そのほうがいいね、ロイン」
「あと仮面工房も作ろう」
こうしてフォークロアキャッスルに仮面工房が出来た。
意外にも仮面工房の設立はだいぶ遅かった。それまで各自のベルダージュが仮面を作っていたのである。補修も同様である。
仮面は己の第二の顔。ロインは謁見を終えて自分の居室に戻り鏡で自分の顔を見る。
仮面を付けて見て再び自分の顔を見る。だいぶ老けてきた。美少年とも美少女とも見える自分の姿の面影が消えていた。だんだん自分が中年の男に逆戻りしていることが分かる。
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