第九話

 ――さ、行くよ。


 ――浮遊魔法唱えるわ。


 ――そうすれば足音しないの。


 ――頭いいね。


 こうして一行は夜中に村を出る。


 見つかれば俺たちも殺される!


 しかし、あっけなく見つかった。


 「どこに行くのかな? 狼は夜でも目が利くのでね」


 そこに居たのは闇色の狼の仮面のベルダーシュ!!


 全員身構える。


 「『抜け』は抹殺という掟を忘れたのかな?」


 声は仮面によって変えられていた。素性が分からない。


 「死ね」


 そういって業火の魔法を三人に浴びせる。


 「逃げろ」


 ロインの声によってみんな攻撃をかわす。


 「おっと、これでも食らえ」


 そういって毒霧の呪文を唱える。


 「みんな、仮面をかぶって変身するんだ。遠くに逃げるぞ」


 毒の霧から避けるためにばきばき音をならしながら逃げていく三人。


 「逃がすものか」


 そう言うと闇のベルダーシュも呪文を唱えると闇色の狼に変化する。


 蒼鬼に変化したハルを竜が手で掬いあげて逃げていく。


 「ちっ!」


 「うまく逃げ切ったぜ」


 そういうと三人は変身を解除する。


 「さてと……逆襲するか」


 「もう一回変身するぞ」


 そういって三人は変身する。


 「いたぞ。梟の眼からは丸見えだぜ」


 狼の変身を解いた闇のベルダーシュが村に戻っていく。


 「遠くから竜の炎で攻撃する」


 「おうよ」


 そういうとロインは裂けた口から炎をため込んで炎の珠を相手にぶち込んだ!


 そして梟が急速な速さで相手を襲う。


 「しまった!」


 なんとか避けようとしたがそれでも服に火が付いた。転がりながら火を消そうとする。


 変身を解くと二人は闇のベルダーシュの口元を抑え込む。呪文を唱えさせないためだ。


 そして仮面をはぎ取った。


 なんと自分と同じくらいの年齢の男→女のベルダーシュではないか!


 「なぜだ……なぜこんなことをする」


 「なぜ? 簡単なこと。『ラディア』に対抗するため」


 「でも俺だって『ラディア』で殺されそうになったがこのロインが救ってくれたんだぜ」


 (こいつがロインか!)


 「お前の村も衛生状態を良くしてやる。そうしたら闇のベルダーシュから抜けるって約束してくれるか」


 「俺、実はな『水道』を作れるんだ。雷の魔石と樹、つまり木材があればな。病魔の原因はベルダーシュなどではない。衛生状態が原因なのだと」


 「ほお、面白い。見届けてやるぞ」


 「だが、俺の村はロッキー山脈からは離れている。今来た道の反対側だ」


 「そっか。戻る労力が大変だな」


 「それは心配ない」


 「へ?」


 「転移魔法を唱える」


 「とか言って自分だけアジトに逃げる気だろう」


 「信用してくれないというのなら一緒に手をつないでくれ。もっとも非術者を転移させる場合手をつなぐ必要があるけどな」


 「全員繋いだか?」


 「ああ」


 「じゃあ唱えるぞ」


 そう言うと闇のベルダーシュは呪文を唱えた!


 自分の体の周りが闇に渦巻いている!!


 やがて周りの景色が歪む。


 「心配するな。一瞬だ。どうしてもというのなら目をつぶれ」


 そして一気に景色が消失し、別の景色がぼんやりとそしてだんだんはっきりとしてきた。


 「ここは……」


 「ここはミシシッピ下流の村……ナゴト村の入り口だ」

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