第十話
「俺の名はまだ教えられない。というかここで自分がばれたら殺されてしまう。だから全身闇色の衣装の姿でいることを許してくれ。もちろん仮面もだ。声でばれてしまうからな」
「分かった。じゃあ仮の名で呼ぶがいいか?」
「いいだろう」
「『ケイン』だ。ロインに似てるだろ?」
「悪くない」
「じゃあ、村に行くぞ」
そして五分ほど歩くと村に入った。
「これは……」
ごほごほせき込む村人たちの姿だった。
見るからに栄養状態が良くない。
「あの……この村のベルダーシュは?」
「あそこの家だ」
言われるままにベルダーシュの家に入った。壁には三つも仮面が飾ってあった。緑鬼、黒鬼、一つ眼の鬼だ。動物表現が出来ない場合手っ取り早く人間の造形に角を付ければ鬼の仮面が出来る。その代わり変身してもあまり強くなれない。
「はじめまして」
「ちょっと村の状態が酷いね」
「ええ……だけど余計な事したら私『妖術師』として前の人みたいに消されるわ」
「しかも前の人は逃げたから、私初歩中の初歩の魔法も知らないの。出来る魔法はこれだけ」
掌に炎が生じた。家の中で火を出すのは危険なのですぐに掌の炎を消す。
「俺、ロインって言います。俺、水道作って、ハーブ園も作ってこの村の衛生状態を良くしていきたい」
「『水道』って何?」
その問いにロインは手短に説明する。
「それはスゴイわ!!酋長の家に案内する!!」
「私の名前はワケよ」
「よろしく」
酋長の家に案内された。
そして水道の事を話す。
「まことか」
「ああ、だからラディアを辞めてほしい」
「分かった。本当かどうか見せてもらうぞ」
「任せとけ!」
こうして水道づくりが始まった。
樹を切り倒し、さらに木材同士で固定する。木製の水道管が完成する。
「雷の魔法の魔石があった」
「さすが土魔法のプロ」
「で、こうして」
ポンプが完成すると近所の小川の取水口からどんどん水が来る。
まず一件目の家に水道がやってきた
「信じられないわ!!」
喜ぶ主婦。
「水はちゃんと
切り倒した林の切り株は業火の魔法で焼き払い、そこをハーブ園にする。もちろんここにも水道を引く。
「日が暮れた」
今日はここまでだ。
無料で宿屋を紹介される。
村人は歓迎一色だ。
「明日もよろしくな」
「ああ」
「しかもこんなに魔力が増幅する魔石を見つけてくれるなんて」
「いいえ、お互いメリットあるから」
「今日はぐっすり寝ろよ」
「ああ」
そして二部屋に分かれた。
ロインとカズヤは胸のパットを外す。
「仮面とってもいいぞ、ケイン」
ケインは仮面を取った。
「ケイン、残念ながらまだお前を信用出来ない。今日は片腕にロープを付けて眠ってもらう。それと水晶玉などで連絡とることも禁止だ」
「仕方ない。受け入れよう」
「ところで明日なのだが」
「俺は水道建設では何も力になれない。そこであのベルダーシュに術を教えたいのだが。カズヤを監視役に置けば問題ないと思うがいかがだろう」
「いいだろう」
「じゃあ俺も胸のパットを外す」
そう言ってケインは胸のパットを外した。
「おやすみ」
明かりを消すと闇の世界となった。
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