第十二話

 ロインは開墾かいこんした土地に種を植えていく。冬が近づいていた。


 ロインが植えたのは儀式に必要なハーブや麻だ。


 ベルダーシュがトランス状態となり先祖の霊を自分の体に降ろすために使うのだ。


 要注意なのはこのハーブは依存性が高く廃人になることもある事だ。


 ゆえに儀式は慎重にしないといけない。


 ロインは幼少期に両親を亡くしている。母は出産のとき、父は四歳の時に病死してしまった。四歳で部族同士で育てられたのだ。ロインは情緒不安定となり他の子供とは全く違う子となってしまった。ゆえに降霊儀式こうれいぎしきはあこがれだった。なぜなら死んだ親に会えるからだ。


 「すばらしいですわ!! ロイン様!! 降霊儀式を強化なさるのですね」


 「そうなんだ」


 「これでますます我が部族は強くなるぞ」


 「まあ、その代わり俺の責任が増すんだけどな」


 「ロイン様なら大丈夫。敵も一網打尽ですわ」


 「ありがとう」


 「ちょっと河原に行って魔法の練習をしてくる」


 「夕方までには戻ってくださいね、ロイン様」


 「ああ」


◆◇◆◇


 ――けっ、自分の事しか考えてなかった


 ――それ、酋長に言ったら? ロインはあくまでナンバーツーなんだから


 ――それもそうか


 ――まあ、傷を治すハーブを植えたのは評価できるがな


 ――ロインが妖魔や病魔をこの村に呼んで来たらどうしよう?


 ――その時は深夜にサークレット奪って魔法を唱えさせられないようして縛り上げて火あぶりにする


 ――次のベルダーシュは?


 ――適当に次の落ちこぼれを試練の洞窟に行かせればいい。九割は試練合格らしい


 ――そりゃロインも合格できるってわけだ


 ――でも黄金の大鷲おおわしの夢のお告げが無いと試練の洞窟に行けないだろう?


 ――知らないの? あの時ロインに暗示をかけたんだよ


 ――へえ


 その時トカルはびくっとした。彼こそ「次の落ちこぼれ」だったからだ。村人は一目散となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る