第十一話
紅葉で満ちる時期になった。
ロインはさっそく他の家におじゃまして手芸をしてみた。
しかし予想通りぐちゃぐちゃになる。ロインはあまりにも不器用で簡単な道具すら作れなかった。
「いいのよロインは。その魔法の力でこの村を守って頂戴」
無理な愛想笑いが余計にロインを傷つけた。
「ロインの魔法のアイテムは私たちが作るから大丈夫」
こうしてロインは手芸の製作の場を追い出された……。
本来『男→女』となった場合の普段のベルダーシュは手芸をするのが基本である。
しかしロインは魔法はともかく今まで通り生活の基本がまるで出来なかった。
ロインは酋長にこの一連の出来事を報告する。
「困ったのう」
「俺、魔法の練習に行きます」
「……」
酋長の痛々しい視線がロインに刺さる。
(どうすれば俺は魔力以外で村に貢献できる?)
(どうすれば……)
ロインは河原に出た。
ロインはとりあえず思い付きで雷魔法を唱えた。紅葉しはじめた樹が倒れた。
(どうすれば……)
ロインは業火の炎を唱えた。紅葉した葉が燃えた。
(どうすれば……)
ロインは風の刃の魔法を唱えた。
河岸の反対側の樹が倒れる。
(これだ……!)
「これだ。
ロインは森に次々風の刃の魔法を唱える。
次々……木が倒れる。
ロインは次に細かく切り刻む。
ロインは切り株に業火の術を唱える。
さらにロインは浮遊魔法で薪を運ぶ。
まさに完璧であった。
ぽかーんと見ている村人たち。
こうして新しい農地をロインは作った。
――ザイロはバトルバカだったがロインは何を考えてるか分からないわ
――狩猟の森が……ああ……冬は狩猟の季節なのに
――やっぱベルダーシュは危険な存在なのよ
しかしロイン本人が来ると村人たちは笑顔になる。
「素晴らしいですわ、ロイン様。もう薪を作る必要がしばらくありませんわ!」
「おかげで仕事が楽になったよ、ありがとう」
「当たり前よ!」
ロインは村人の気持ちを全く理解していなかった。
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